「富士山を黒幕で隠す」日本のダメダメ観光対策 「オーバーツーリズム」に嘆く日本に欠けた視点

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地方財政のために観光客を切実に必要としている都市としては信じられないことに、京都の地下鉄はほとんどの観光客が行きたい場所まで通っていない。バスに関しては、初めて利用する人には理解しがたい時代遅れの運賃システムがいまだに使われている。

国家レベルで最も重要なことは、日本は観光客の需要を閑散とした田舎に向けなければならないということだ。

悲しいことに、メディアの注目が一部の過密スポットに集中する一方で、日本の準一等地は「アンダーツリズム」に苦しんでいる。東京の島々から群馬の温泉まで、斑尾高原から福井の永平寺まで、日本には素晴らしい場所が少なくない。

地方はいまだに観光対応ができていない

例えば、4月に訪れた熊野古道の場合、外国人観光客を必要としているにもかかわらず、バスはいまだに現金と国内居住者しか使えないペイペイのみで、多忙なバスの運転手は英語を話すことができない。

また、昨年9月に能登を訪れたが、この時、日本のこの素晴らしい地域の将来が外需にかかっていることは明らかだと感じた。1月のこの地域を襲った地震により多くの住民が今も苦しむ中、観光の話をすることは不適切と思われるかもしれないが、この美しい地域の経済にとって観光が非常に重要であることは変わりがない。復興の計画にあたっては、ぜひこのことを十分に考慮してほしい。

外国で運転する人が運転するために必要な国際免許を日本で得るのは簡単ではない。そのため、ほとんどの観光客が日本でレンタカーを借りようとは思わない。だが、政府が外国人に地方を訪れてもらいたいのであれば、日本での運転を積極的に推進しなければならない。自由に歩き回れる唯一の方法であり、特に家族連れには便利だ。

昨年9月に石川県と福井県を車で訪れた者としては、観光客がそのためにこうした素晴らしい場所を訪れにくいという状況は残念に思う。滞在中、私が出会ったのは外国人観光客を歓迎してくれる人々だけで、外国人観光客はもうたくさんだ、という人には出会わなかった。

本来、富士河口湖のような場所では、オーバーツーリズムと戦うのではなく、より大きな問題であるアンダーツーリズムと戦うべきなのである。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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