富士フイルムの意外な"稼ぎ頭"と成長事業の中身 伸び盛りの半導体材料は「マルチ戦略」で勝負

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ナノインプリント半導体製造装置には、既存の半導体露光と比べて圧倒的に少ない消費電力で微細な回路を描ける強みがある。満を持して、キヤノンが2023年10月に投入したばかりの半導体製造装置だ。(詳細は「キヤノンが10年越しで開発、「究極」の半導体露光」

とはいえナノインプリントは、まだ市場に浸透するかは見通せない新技術。富士フイルムはナノインプリント半導体製造装置に期待し、従来のフォトレジストと大きく異なる専用材料の販売を決めた。

富士フイルムの提供する半導体材料の中では、約8割の世界シェアを誇るイメージセンサー用カラーフィルター材料が有名だ。現在、日本、台湾で製造をしている。2024年末には韓国でも製造設備が稼働予定だ。

しかし、同社の提供する半導体材料はそれだけではない。半導体の基板材料であるウェハーに回路を描く際に使われるフォトレジスト、研磨剤のCMPスラリー、保護膜の形成などに使われるポリイミドなどラインナップが幅広い。

M&Aで半導体材料を拡大

これまで富士フイルムは、買収を駆使して半導体材料事業を拡大してきた。半導体材料を手がける発端となったのは、1983年にアメリカのフィリップ・エー・ハントケミカル社と合弁設立で参入したフォトレジストの輸入販売だ。翌1984年から、国内企業向けに国産フォトレジストの製造を開始した。

稼ぎ頭のインスタントカメラ「チェキ」には、祖業である写真フィルムが使われている(撮影:尾形文繁)

2004年にはアーチケミカルズ社の電子材料事業を買収し、同事業に本格参入した。

続いて2010年には、CMPスラリーの専業メーカーを、2015年にはシリコンウェハーの洗浄などに使う高純度溶剤のメーカーを買収。2017年の和光純薬買収は、研磨後に使うポストCMPクリーナーなど半導体材料と、試薬などヘルスケア領域の二兎追う戦略だった。

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