富士フイルムの意外な"稼ぎ頭"と成長事業の中身 伸び盛りの半導体材料は「マルチ戦略」で勝負

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長年、写真フィルムで培ってきた品質管理など化学の技術と資金とを生かし、買収企業の製品の改良と製造能力の拡大を進めてきた。2023年10月には、アメリカの半導体材料メーカーから半導体の製造工程で洗浄などに使われるプロセスケミカルの事業を買収。これにより複数の欧米拠点に加えて、東南アジアにも富士フイルムとしては初となる半導体材料の製造拠点を手に入れた。

分業と専門特化が進んでいる半導体業界のなかでも、材料分野はとくに「餅は餅屋」の傾向が強い。たとえば富士フイルムも製造しているフォトレジストでは、JSRと東京応化工業のシェアが高い。しかし富士フイルムは、幅広い製品ラインナップを持つことに意味があるという。

「半導体製造は分業が進んでいるといっても、そこには相互依存がある。製造工程が複雑化するなか、1つの材料だけで解決できる課題は限られる。ソリューションの変数を多く持つことが強みになる」と、石原来・エレクトロニクスマテリアルズ事業部統括マネージャーは説明する。

半導体材料を2030年度までに2.5倍

加えて、技術に明るい人材を育成するという観点からも有効という。技術革新は目下、あらゆる工程、材料において起きている。幅広い顧客とのやりとりを通じて、最新の技術動向を正しく理解する助けにもなる。今回のナノインプリントレジストの開発にも生かされている。

業界ではめずらしいマルチ戦略を武器に戦う富士フイルム。幅広い見識が先例のない工程への挑戦を可能にしたと同時に、新領域で先行してポジションを確立する狙いもある。

2024年3月期の半導体材料の売上高は1997億円だった。これを半導体市場の拡大と買収企業間のシナジー加速により、2031年3月期には5000億円まで成長させる計画を掲げる。マルチな半導体戦略の成否が、計画達成のカギとなりそうだ。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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