ブラジルで『AKIRA』はやらせた日系3世の挑戦 今年は『ゴジラ-1.0』や『君たちは』の配給も

✎ 1〜 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 26 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

追い打ちをかけたのが、ハイパーインフレの抑制として政府が投じた預金封鎖プランだ。

90年代前半のブラジルで多くの企業が倒産し、それは零細なレンタルビデオ店も同様だった。サトウ・カンパニーはテレビ放映と並行してレンタルビデオ店にビデオソフトの販売も続けていたが、未払金回収に苦労し倒産寸前まで陥った。

『AKIRA』で切り開いた劇場上映

そこで同社が新たに乗り出したのが劇場上映だった。1991年7月、最初に選んだ作品が、大友克洋監督の『AKIRA』だった。

「配給会社向け先行版映像を見て、本当に気に入ったんです。東宝と原作漫画を取り扱う講談社と商談を行い、ブラジルでの上映権を獲得した。この作品は行ける!という若さゆえのフィーリングもありましたね」と佐藤氏。

『AKIRA』は時代を先取りしたアニメとして、ヨーロッパで高い評価を得ていた。佐藤氏は、その評判を携えて劇場に売り込んだが、当初はなかなか受け入れてもらえなかった。

「そのころのブラジルでアニメの劇場上映といえば、吹き替えのディズニー作品一択。字幕付きで、かつ大人向けである『AKIRA』に対する反応は冷たく、多くの劇場から配給を断られました」(佐藤氏)

ようやく上映にこぎつけたものの、最初はサンパウロ市内1カ所。それでもPR会社を雇って大々的に宣伝し、7本の上映用コピーフィルムをフル活用し、上映の場を広げていったところ、1年間のロングラン上映を成し遂げ、計25万人の観客を動員した。

時代は変わり、世界の映像コンテンツ産業は、配信サービスが主流となっている。

大手のNetflixが配信サービスに移行した矢先の2011年に、Netflixのブラジルで配信される映像作品のコンテンツ・アグリゲーターとして初めて契約したのが、サトウ・カンパニーだ。

コンテンツ・アグリゲーターとは、制作会社などからコンテンツを収集し、配信会社に提供する事業者だ。作品の良し悪しに加え、担当する国や地域で受けるかの判断が委ねられている。

Netflixがオリジナルコンテンツの制作に力を注ぐようになった今、同社は再び劇場公開の配給に力を入れ始める。2023年7月からは東洋人街リベルダーデのブラジル日本文化福祉協会(以下、文協)の多目的ホールを活用し、週末限定で日本やアジアの映画を上映する「サトウ・シネマ」を開催する。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事