「行きすぎた円安は日本株にマイナス」は本当か 円安を問題視する空気が強まるとどうなるのか

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最近の日本株の相対的な弱さをどうみるか。いくつか要因が考えられるが、市場には、大幅な円安の進展は「日本経済への不安」を象徴しており、市場心理を冷やしているとの見方がある。確かに、円安で家計の実質所得が減っていることは個人消費の弱さの一因ではある。だが、円安が行きすぎているから経済成長が強く抑制されているのだろうか。

実際には、およそ30年ぶりに目に見えて起きている「物価高と賃上げの好循環」は、企業業績改善がもたらしているものだ。そしてその企業利益は円安によって押し上げられているのだ。

そもそも、アメリカ経済の堅調さが円安の主因なのだから、円安が日本株高を抑制しているとの見方は的外れであり、また通貨価値が下がっても、国力や日本の経済的な豊かさが低下しているわけではない。メディアで散見される「円安を憂う見解」は、人々の不安を煽るための情緒的な言説が多いのが実情で、最近の日本株の出遅れと円安には、ほとんど関係はないと筆者は考えている。

「円安=日本株高」の構図は不変

実際に、2022年から円安と日米相対株価(日本株/米国株)が連動する関係はほとんど変わっていない。2024年初に日本株が米欧株をアウトパフォームしていた時期に日本株の上昇ペースがやや早すぎたので、3月以降は日本株の値動きがやや弱くなっている、ということだろう。

また、3月決算後に判明した2024年度の企業業績予想が小幅ながら減益になったことが、やや嫌気されている可能性がある。2024年1~3月の経済成長率がマイナスに転じるなど、日本の経済成長が冴えないことなどが影響しているが、実際は、為替レートの想定を含めて多くの企業が業績予想をかなり保守的に見積もっている、というのが実情だろう。

最近の円安の背景には複数の要因が影響しているが、「日本円から海外投資家が逃避していることが円安を強めている」といった思惑もあるようだ。「海外投資家が日本株の売却を増やしているから、日本株が上がらない」と考える論者がいるのかもしれない。

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