西武が売却?「赤プリ跡地の施設」失敗の本質理由 多様性を求めると、商業施設はパッとしなくなる
ニーズの問題でいえば、(もはや前の部分の繰り返しになってしまうけれど)東京ガーデンテラス紀尾井町は、誰のニーズに合致しているのかがわからない。広い庭園はある。でも、そこは東京の中心部のオフィス街で、潜在的に若い層がいるわけでもない。外国の人が、東京らしい風景を楽しめるか、といえば、特にそうでもない。
この意味で、とにかく「パッとしない」のが、東京ガーデンテラス紀尾井町なのだ。
ところで、ここまで書いてあることに気付いた。
信念なく「多様性」に頼ると、「平凡」になる
東京ガーデンテラス紀尾井町の1つの特徴は、様々な景観の「多様性」にあるという。確かに、自然もあれば、歴史もある、そしてオフィスビルもある。
しかし、「多様」であるがゆえに「凡庸」なのではないか? だから、パッとしないのではないか? これは、景観だけでなく、そのターゲッティングにもいえる。サラリーマン向けでもあり、観光客向けでもあり、若年層向けでもある。そんな施設は平板でしかない。
「多様性」がキーワードの時代だ。もちろん、それ自体を否定する気はない。
しかし、商業施設の開発においては、愚直に「多様性」を叶えようとすると、はっきり言って、施設としてはパッとしないものになる。
「多様性」というのは一つのスローガンにしかすぎない。実態としては、ある程度顧客のターゲッティングを絞ったほうが、施設全体としての魅力は向上するに決まっているのだ。
そして、その具体例が、ここでみてきたような「世界観の創出」と「顧客ニーズの把握」にある。
報道では「保有型から回転型の不動産ビジネスに転換する。資金はリゾートや都心の再開発に回す」と書かれていたが、筆者には、ひとまず現状を否定しているだけにしか思えなかった。はたして、「保有型」の不動産ビジネスだからダメだったのだろうか?
「多様性」の時代に、「多様性」を否定すること。それが、これからの商業施設に求められているのかもしれない。
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