原宿に爆誕「ハラカド」訪れた私が呆然とした理由 「センスのいい若者」を呼び戻す野心に満ちている

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でも、こうした「選別」を、私は全く悪いものだとは思わない。むしろ、「原宿セントラルアパート」のように、一流のクリエイターたちが集まり、そこをカルチャーの拠点にしていくためには、ある種の「選別」が当然必要だろう。

原宿には、かつて日本ではじめてのクラブである「ピテカントロプス・エレクトス」があった。そこには、YMOをはじめとする、1980年代の文化人たちが多く集った。劇作家としても知られる宮沢章夫は、「(ピテカントロプス・エレクトスに)足を踏み入れると、奇妙な緊張感がある。なにか、敷居の高さみたいな」と表現している。「ださいやつは来るな、という閉鎖性があった」とも言う(『東京大学「80年代地下文化論」講義』)。

しかし、宮沢はそれを否定的には捉えていなくて、むしろそのような「選民性」があったからこそ、そこはカルチャーの中心地として流行したのだという。同じ原宿に居を構えた「原宿セントラルアパート」もまた、同じような空気感が漂っていたのではないか。

思えば、カルチャーがそこで芽生えるためには、ある種の「選民思想」が必要なのかもしれない。初期のヴィレッジヴァンガードもそうだ。創業者の菊地敬一は「センスの悪いやつは相手にするな」と言い切った。むしろ、その特権意識こそ、ヴィレヴァンをヴィレヴァンたるものにしていた。

「余裕」と「選別」が文化を作る

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このように思うと、ハラカドが持っている、ある種の「貴族の遊び」っぽさは、同時に、そこに訪れる人を「選別」することにもつながり、ひいてはそれが、ハラカドを「カルチャーの場所」にしていくのかもしれない。

まとめると、こういうことになるだろう。

「ハラカドは、昨今の商業施設トレンドに逆行する、余白や余裕を感じさせる場所で、現代の都市には貴重な滞留空間になりうる。しかし、その一方で、“センス”によって若者をしっかり選別しており、原宿を文化の発信地に回帰させようという野心が感じられる」

昨今、渋谷や原宿から若者が消え、新大久保などに大移動しているという。

そんな逆境にあって、ハラカドは、日本のカルチャーの拠点になるか。そして、原宿に若者を、とくに「センスのいい若者」を呼び戻すきっかけになるのか。

今後の展開に期待だ。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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