子どもと接する仕事に「性犯罪歴を確認」する是非 小児性愛型の同種再犯率は5年間で5.9%

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犯歴が照会される期間については、法案では拘禁刑が20年、執行猶予と罰金は10年間とされている。これに対し、「20年や10年では短すぎる。一生、子どもに近づく仕事には就けないようにしてほしい」という意見も根強い。

一方、刑法では、刑の執行を終えてから罰金以上の刑に処せられることなく10年が過ぎれば、刑が消滅する(前科がなくなる)ことが定められている。20年間の長きにわたって犯歴が照会されるというのは、通常の犯罪ではありえないことで、人権上の問題が指摘されている。

第3に、対象となる罪種も限定されている。法案では、子どもに対する性犯罪、児童ポルノ所持などに加えて、痴漢のような条例違反も対象となったが、下着窃盗などは除外された。

性犯罪は、同種事犯を繰り返す者がいる一方で、多種多様な別の犯罪に手を染める者もいる。今回は下着窃盗の事案であっても、次は別の性犯罪に及ぶ危険性がないとは言い切れないため、この線引きには合理性が乏しい。

性犯罪は発覚しない件数が多い

このように、日本版DBSによって、憲法の保障する職業選択の自由を制限し、長きにわたって犯歴という個人情報を他者に提供するという「大ナタ」を振るうには、抑制的でなければならない一方、抑制的になれば「網の目」が広くなってしまって、取りこぼしがあるリスクがある。

さらに、性犯罪は暗数が多いことで知られる。発覚していない犯罪が多数あるということだ。これは被害者が恐怖心や羞恥心から被害を届け出ないこともあるし、届け出たとしても加害者の検挙に至らないということもある。

子どもの場合は特に、被害を受けていてもそれが性加害だと認識できなければ、加害者を取り締まることができない。このような場合は、当然犯歴として残らないため、網の目をかいくぐって性犯罪を続ける可能性もある。

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