北大阪急行電鉄「箕面延伸」はこうして実現した 地元待望、大阪メトロ御堂筋線と一体直通運転

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一方、「北大阪急行線延伸事業」が具体的に動き始めたのは、2004年の近畿地方交通審議会第8号答申になにわ筋線などと合わせて登載されてからである。ただし、登載に至るには事前の活動がある。中心となったのは箕面市だ。

市は、市街地が東へ長く広がるのに阪急箕面線以外に鉄道はなく、バスに頼る格好であった。バスは熊手状に千里中央に集中するので南北交通ばかり過度に集中し、東西軸の公共交通が乏しく、府下平均に比べてマイカー依存率が高かった。それを課題として、東西の真ん中である萱野への鉄道延伸を1985年の市の総合計画に採択した。萱野を新たなターミナルとし、東西両方向へのバス交通を充実させるとのシナリオだ。

これを受けて1989年の運政審第10号答申に「2005年までに整備に着手することが適当な路線」として登載された。しかし、実際は箕面市が延伸検討委員会を設けたのが2005年となり、以後、路線延伸の意義、需要や収支予測、事業スキームなどを検討、2008年4月に大阪市、箕面市、阪急、北急の4者間で協力し合う旨の覚書を交わした。

箕面萱野駅のホーム上屋は幕屋根で明るい。停車中の車両は大阪メトロの20系で特徴的な前面スタイルのこの電車も30年選手となった(写真:松本洋一)

全額公費とするため立体交差の路面電車に

鍵を握るのは阪急の姿勢と言えた。北急も阪急阪神ホールディングス傘下の企業とは言え、阪急バスの牙城を崩す新たな輸送機関の出現であり、そして箕面線や千里線への影響も避けられない。そのような立場から、一帯のバス路線網を堅持することと、路線を再編して街の発展による成果を期待することが天秤に掛けられた結果、事業には協力するという選択をした。その姿勢は整備費の負担からもうかがえ、北急が受益分を負担する以外の部分についてはすべて国と地方が分担し、阪急は直接的な出資は受け持たない。このような取り決めで2014年3月に4者で基本合意を交わし、2015年12月に都市計画決定、鉄道事業法許可、軌道法特許を取得、2017年1月に起工式を行った。

延伸区間の準拠法は千里中央―箕面船場阪大前間が鉄道事業法、箕面船場阪大前―箕面萱野間が軌道法である。正確には箕面船場阪大前の南側、豊中箕面市境で分かれる。この特殊性は補助金の関係から生じた。

北急のような地下を主とした都市鉄道を整備する際、従来は国の地下高速鉄道整備事業費補助が適用されてきた。ただ、その補助率は対象事業費の35%以内と規定されている(公営・準公営および東京メトロが対象で、地方公共団体からの補助額の範囲内)。だが、それでは鉄道事業者の負担がなおも大きく(国35%、地方自治体35%、事業者30%)、障壁になっていた。そこで今回、箕面市は、国の補助率を50%にできる、すなわち地方の協調補助と合わせて全額を公費負担にできる、社会資本整備総合交付金制度(2010年度に創設)をこの案件で活用できないかと国に提案した。

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