経常収支の不均衡の拡大、米国の「涙のない赤字」がついに限界に来た~米国債格下げが意味するもの--三國陽夫・三國事務所代表/エコノミスト
スタンダード&プアーズが米国債の格付けをAA+に引き下げた。初のAAAの座からの陥落である。日本に格付けを導入した三國事務所の三國陽夫氏は、米国の赤字垂れ流しと日本の経常黒字累積という世界の不均衡が、日本の低成長とデフレの原因であり、是正を迫られる時が来る、との主張をしてきた。三國氏に話を聞いた。
--米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズがついに、米国債をAA+に格下げしました。AAAから初めて転落したわけですが、これをどのように見ていますか。
これまで世界をリードする立場にあった米国の役割に陰りが出ていることが誰の目にも明らかになった。政府は歳出を削って歳入の増加を図らなければならず、これは経済成長には重荷となる。
緊縮財政と景気後退の悪循環に陥る可能性がある。世界経済に占める米国のウエイトは大きいので、いかに世界経済の縮小を避けるかという問題に世界が直面している。
経常黒字国の外貨保有が米国の赤字を穴埋めしてきた
--ドルは基軸通貨の地位を失うのでしょうか。
基軸通貨の原点は、かつては米国が経常黒字国で債権国として金を多く保有していたことにあった。しかし、経常収支が恒常的な赤字となり、この原点は崩れていった。
つまり、いまの事態に至る原因として、長年続く国際収支の不均衡とそれに伴う資本移動があった。この構造が過剰流動性を生み、バブルにつながった。
1971年のニクソンショックでドルと金の交換が停止された。この時、大統領補佐官であったヘンリー・キッシンジャーは、「欧州はドルを売って自国通貨に替えていくだろう、他の国はドルを抱えに来るだろう」と言った。その通りに欧州は統一通貨ユーロ創設へ向けて動き出した。