経常収支の不均衡の拡大、米国の「涙のない赤字」がついに限界に来た~米国債格下げが意味するもの--三國陽夫・三國事務所代表/エコノミスト

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 金とのつながりがなくなっても、ドルが基軸通貨としての地位を保てたのは、黒字国が自国通貨に転換することなく、ドルのまま外貨準備として米国に還流させたからだ。これにより、米国の赤字を穴埋めするので、米国は貿易の不均衡を是正しようとしない。これはかつてフランスのド・ゴール大統領の経済顧問だったジャックリュエフが「涙のない赤字」と批判したものだ。

米国は赤字を垂れ流し続け、借金を重ねた。海外からの資本輸入を行い、消費を拡大することで、成長してきた。住宅バブルはその典型で、借金して住宅投資を行い、住宅の値上がりによってさらに消費を拡大するというものだ。
 
 こうした手法が限界にきた。一方で、日本は経常黒字を続け、キッシンジャーの読み通りに、ドルを抱え込んだ。多額の資本を海外流出させ、その結果、デフレ、円高が進んでいる。

買い物ができなくなった米国は誰も支えなくなっていくだろう。変動相場制の下では、結局、基軸通貨は存在しなくなる。これから、皆が、ドルを自国通貨に置き換えていくドル離れの動きが進むだろう。

格付け会社は、米国経済の過剰債務の実態に照らして、もっと早くから警告を発しておかなければいけなかった。

経常黒字が蓄積していき、日銀の金融緩和効果も限界に

--日本の円高、デフレは経常黒字の累積がもたらしたものだと一貫して、主張してこられました。

経常黒字=資本輸出ということであり、これには2つの効果がある。まず、購買力を海外に持っていくということだ。その分、国内経済活動が減るということだ。

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