このタブー破りの背景に何があったのか。それは3年目に入った、ロシアのウクライナ侵攻作戦だ。
イワノフ氏はロシア省庁として最大の予算を得ている国防省の建設事業の最高責任者だった。ウクライナ領内のロシア占領地での住宅建設事業も統括していた。イワノフ氏の具体的容疑は不明だ。
しかし、基地や兵舎建設を企業に国家発注しながら実際には建設せず、事業費をショイグ氏周辺が懐に入れていたというスキームが横行していたと言われている。
プーチン政権が軍事費に大きく傾斜した苦しい国家予算のやり繰りに苦労している最中に、ショイグ氏グループが予算を食い物にしていたことになる。侵攻前なら、許されていたかもしれない。しかし今回、プーチン氏はさすがに激怒したと言われる。
実際には国家反逆罪を犯した?
一方で、ロシアの一部報道ではいっそうショッキングな疑惑が浮上している。イワノフ氏らが西側情報機関に極秘情報を渡したという「国家反逆」容疑だ。クレムリンはこの情報を「マスコミによる臆測」と否定している。
しかし、状況証拠として「あり得るな」と思わせる未確認情報がある。プーチン政権の腐敗を追及しているロシアの元反政府運動指導者であった故ナワリヌイ氏の組織が、イワノフ夫妻がロールスロイスを乗り回してパリの高級ナイトクラブで派手に交遊していたとする映像をSNSで2年前から盛んに流しているのだ。
イワノフ夫妻は欧州で城も購入したとも噂されている。この国防省高官としては考えられないような豪遊の中で、イワノフ夫妻に西側情報機関が接近し、国家機密を受け取ったとの説だ。
この「国家反逆罪」説の真偽は、今後の捜査や裁判の中ではっきりする可能性もある。しかし、ショイグ氏が安全保障会議書記に異動したことを見れば、当面ショイグ氏が追及の矢面に立たされる可能性は少ないだろう。
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