EV普及「鶏が先か卵が先か」の議論が動き出した 充電インフラ拡充で「踊り場」は前進するのか?

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直近では、グローバルでEV需要が「踊り場」になったという報道が目立つ。「踊り場」とは、上昇ペースが落ち着いて停滞状態となっていることだ。その背景には、さまざまな要因が絡み合っている。

たとえば、欧州連合のグリーンディール(気候変動)政策パッケージ「Fit for 55」で、「2035年に乗用車と小型商用車はEV・または燃料電池車(FCEV)に限定」が事実上、変更されたこと。中国での経済成長の鈍化。そして、低価格な「モデル3」「モデルY」がもたらしたテスラブームの沈静化などである。

一方、ハイブリッド車(HEV)で知見のある日系自動車メーカー各社は、EVのみならず、プラグインハイブリッド車(PHEV)やFCEVを含めた各種電動車、クリーンディーゼル車、水素エンジン車などを、国や地域の社会情勢に合わせて複合的に展開する姿勢を貫いている。

トヨタは液体水素燃料を使うエンジンを研究し、レース(スーパー耐久)への実戦投入も行っている(筆者撮影)
トヨタは液体水素燃料を使うエンジンを研究し、レース(スーパー耐久)への実戦投入も行っている(筆者撮影)

さらに、日系ビッグ3のトヨタ、ホンダ、日産は全固体電池など、次世代技術の早期量産化に向けた研究開発を加速している。

「EV普及の3大課題」という議論を超えて

こうした、政治主導による環境関連事業への投資政策と、それらに大きな影響を受けながら研究開発を進める自動車産業界という関係性は、当面の間、変われないかもしれない。

だが、EVを取り巻く環境を俯瞰すると、車両コストや充電インフラ等を主とした「EV普及の3大課題」という技術領域を議論する時期は、すでに超えているように思える。

日産横浜工場内のミュージアムではEVの課題などがわかりやすく示されていた(筆者撮影)
EVを含むエネルギーマネージメント事業全体に関する、パナソニックの展示(筆者撮影)

これからは、EVを日常の生活や事業の中で使う主要エネルギーである電力の仲間にしっかりと組み込んだ社会体系の作り方を、国・地方自治体・メーカー・販売店・サービス事業者・ユーザーそれぞれが真剣に考えるステージに入るのだろう。

現状でのEVは、ガソリン車やハイブリッド車の「代替」という範疇にとどまっており、充電インフラ整備についても場当たり的な印象がある。

本来、EVは地域社会のエネルギー/データ/移動を総括的に捉えるためのバロメーターであり、社会変革に向けた優良なデバイスであるべきだ。
そうした抜本的な社会変革を踏まえたサービス事業の一部として、充電インフラを位置づけるべきだと思う。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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