中国各地の都市で、EV(電気自動車)の入庫を前提にした地下駐車場の安全基準を強化する動きが相次いでいる。車載電池の自然発火による火災のリスクを抑えつつ、仮に発火しても被害を最小限にとどめるのが狙いだ。
その大きなきっかけは、韓国の仁川市で8月1日に起きた火災事故だった。地下駐車場に駐車されていた1台のEVが自然発火し、周囲の自動車に引火して140台以上が全焼または一部焼損、有毒な煙を吸った住民が病院に搬送される事態になった。
韓国の事故は中国でも大きく報じられ、一部の病院、ホテル、公共施設などが(火災リスクの回避を理由に)地下駐車場へのEV入庫を断るケースも出てきた。だが、このような一律の禁止対応はEVユーザーの利便性を損ねるだけでなく、EVの普及を後押ししてきた中国政府の政策とも矛盾しかねない。
電池の自然発火は予測困難
そんな中、複数の地方政府が国家レベルの安全基準の策定に先駆け、独自の対策に乗り出している。
例えば江蘇省常州市は、10月25日から「EV地下充電施設の建設および消防・安全管理の強化に関する規定」の試験運用を開始。広東省深圳市は、11月1日から「新エネルギー車の地下駐車スペースの消防安全管理ガイドライン」の適用を始める予定だ。
「EVの自然発火のメカニズムはエンジン車とは大きく異なる。動力源であるリチウムイオン電池の自然発火は偶発性が高く、予測困難だ。また、いったん発火すると消火するのが難しく、発生ガスの有毒性も高い」
深圳市の消防当局と研究機関が共同でまとめたガイドラインの解説文では、EVの自然発火事故の特徴やリスクをそう指摘している。
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