ドル基軸通貨体制は終焉、通貨無極時代に~米国債格下げが意味するもの--浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授

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--中国はどのような役割を果たすのでしょうか。

中国はこれから難しい。いわば体の大きい天才子役だ。世界は中国を世界の工場に仕立てようとしている。大人が思春期の子どもに重い役割を押し付けているというのが実態だ。
 
 天才子役は大人になったら名優にならないことが多い。一党独裁の一方で経済は資本主義・市場主義という絵に描いた餅をどうするか。大革命・大動乱にしないでソフトランディングできるか。日本はそれを手助けする役割をになうべきだ。

--TPPは現代の鎖国、FTAは望ましくない、と主張していますね。

自由貿易協定(Free Trade Agreement)というネーミングがまやかしの元だ。いずれも地域限定の排他的な取り組みだ。相性の良いものだけで自由化を進めれば、他の国や地域が排除される事態が起きる。実態は、貿易不自由化協定だ。

--WTO(世界貿易機関)の基本原則の実現が難しいというところからそうした動きが始まりました。

グローバルな経済運営をするためには、いまこそ、WTOの理念である「自由、無差別、互恵」は、論理的なバックボーンとして有用だ。GATT(関税および貿易に関する一般協定)からの本来の、分かち合い、協調という意味合いが、パックス・アメリカーナのなかで、米国の意向によって、振り回され、ゆがんでいた。
 
 米国の力がなくなったことで、IMF(国際通貨基金)体制は存在意義がなくなってくるが、WTOは価値が上がっていると思う。FTAなどやっている場合ではない。

グローバル時代は1990年から始まってようやく20年を迎える。日本を含めG20諸国はグローバル時代の大人として、これからの時代の新たな枠組み、賢い付き合い方を考えなければならない。
 
 「自分さえよければ」という形で、国民国家の閉鎖的な世界に戻るということはもう出来ないし、危険なことだからだ。

はま・のりこ
一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長を経て、現職。専門分野は国際経済学、欧州経済論。番組出演など国内外メディアへの登場も多い。近著に『「通貨」を知れば世界が読める』 『浜 矩子の「新しい経済学」 グローバル市民主義の薦め』など。

(聞き手:大崎 明子 =東洋経済オンライン)

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