ドル基軸通貨体制は終焉、通貨無極時代に~米国債格下げが意味するもの--浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授
ニクソンショックも、強いアメリカ、成長するアメリカのイメージを保持するために行われた金との兌換停止自体が、ドルの地位低下、インフレを引き起こすことだった。
--QE3が米ドル暴落につながる可能性はないでしょうか。
大いにある。大局観に立てば、デフレ圧力があるので、目に見えるインフレにつながるかどうかは別だが、格下げを受け、金利もゼロ、実態的にはマイナスという状況では、米ドルは「吸引力」を失う。そういうなかで、供給量を増やせばどうなるか。ハイリスク・ローリターン通貨となってしまった。
--日本や中国は巨額のドルを外貨準備として保有しています。
債権国である日本や中国がこれをどう乗り切っていくのか、難関だ。中国は外貨準備に占めるドルの比率をそれなりに下げてきたが、日本は、このたびも円売りドル買い介入で増やしてしまっている。中国や日本にとって最大の「大きすぎて潰せない」不良債権だ。担保も取っていない。ホワイトハウスを差し押さえるわけにも行かないので、実態的には債権放棄、つまりドルの大幅減価とならざるをえないだろう。
企業経営は、腹をくくって、なるべくドルを取引に使わないという措置をとるしかない。もっと早い時点から動くべきだったが、企業によっては、9割方を円建て取引に変えているという経営者もいる。まだ全体としては、円建ては3割程度だと思うが、民間は自然体で合理的な選択をするだろう。
いまや、かつての基軸通貨であるポンドが下がっても大打撃を受ける人はいない。同様に、ドル離れが進行中だ。
円は「隠れ基軸通貨」、大人の対応求められる日本
--著書で、ファイナンス通貨として世界中で使われている円を「隠れ基軸通貨」と呼んでいますね。
「隠れ基軸通貨」という実態から政府も日本銀行も目を背けてきた。自ら、グローバルな世界とつながり、グローバルな世界をファイナンスしている通貨の番人であると言う認識を持って、政策を切り盛りするべきではあったが、そういうことは物凄く厄介なことだ。