「絶歌」で注目、"サムの息子法"を日本にも

7割の弁護士が日本での制定に「賛成」

田島直明弁護士

被害者支援の法制度の強化が求められている世論の中、犯罪者が得た利益を犠牲者に還元することは意義があると考えますので、法律の制度それ自体には賛成します。ただし、犯罪加害者による出版を禁止するのは、憲法上保障された表現の自由に違反する恐れがありますし、また「サムの息子法」が目的とする犯人の収益没収についても財産の自由の侵害が問題になります。そこで、収益の没収を一部にとどめる(たとえば8割)のであれば、違憲を回避することも可能になるのではないかと考えます。

日本では「制定すべきではない」という意見

塩見恭平弁護士

『絶歌』出版を受け、個人的に大きなショックを受けました。そして、その内容に強く興味を持ちました。しかし、犯罪を利用した金儲けに加担する形になるのが嫌なので、購入することはありませんし、心情としては利益全額を没収した上で遺族に渡すべきだと思います。但し、『サムの息子法』のように強制力によって出版による利益の差し押さえを行うことは表現の自由に対する大きな萎縮的効果を生むことになります。もっとも唾棄すべき表現を守ることが表現の自由の本質ではないかと考える以上、制定すべきと積極的には言えません。

秋山直人弁護士

現在の法制度でも、被害者が加害者に対する損害賠償請求権について、被害者に訴訟を提起して、あるいは刑事裁判の際に損害賠償命令の申し立てを行って、債務名義を取得したうえ、加害者の出版社に対する印税の分配請求権を差し押さえることによって回収することは可能だろうと思います。確かに、被害者に過度の負担をかけないように、特別法を制定することも考えていいかもしれませんが、現実的には、なかなか今回の件だけをもって特別法の制定というのも難しいのではないでしょうか。

加藤尚憲弁護士

立法の趣旨としては理解できなくもありませんが、法律の適用がなされるケースが果たして何年に一度あるかどうか、疑問です。国会の会期中に審議が可能な法律の数にはおのずから限界があり、政治や経済の重要な課題を解決することや、より重要な法案について審議することに時間を振り向けたほうがいいと考えられます。

濵門俊也弁護士

仮に日本版「サムの息子法」を制定したとして、一般化できるほどのケースが、今後、現れるかについては、かなり疑問があります。また、犯罪者が自らの事件を商業的に利用して得た金銭を奪うことにより、犯罪の収益性を除去する目的は理解できますが、得られた収益のうち、どの程度まで犯罪被害者らへの補償するのかなど、政策判断はかなり難しいでしょう。『見ない。買わない』という不買活動という視点もあるように思います。

 
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