「絶歌」で注目、"サムの息子法"を日本にも 7割の弁護士が日本での制定に「賛成」

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<日本でも制定すべき>と回答した弁護士からは、犯罪被害者に対する現状の補償制度が不十分なことを理由に、犯罪者が自身の犯罪に関することで得た利益を、被害者の救済に充てるべきだという意見が複数あがった。また、表現の自由については「出版自体を制限しないのであれば、加害者の表現の自由も一応守られていると言える」などの意見があった。

一方、<日本では制定すべきではない>と回答した弁護士の中には、強制的に利益の差し押えを行えば、「表現の自由に対する大きな萎縮的効果を生む」という意見や、法律を適用できるケースが、今後、何件発生するかが疑わしいため、制定は難しいのではないかという意見があった。

回答のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士14人のコメント(全文)を以下に紹介する。(掲載順は、日本でも制定すべき → 日本では制定すべきではないの順)

日本でも「制定すべき」という意見

居林次雄弁護士

犯罪を悪用して得た経済的利益については、回収して被害者保護に充てるべきであると思われます。著者が反省して、印税を寄付するという方法もありましょうが、手っ取り早く、被害者救済に向けるには、法定しておくほうが迅速でよろしいと思われます。犯罪を金儲けの一助にするということ自体が、許されないと明確に宣言されることになりますから、思慮の浅い人にも悪質な人にも平等に当てはまるという長所があります。

石井康晶弁護士

犯罪被害者や遺族が加害者から十分な賠償を受けられないケースは多く、自己の犯罪を書籍の出版という形で利用して得た利益を、被害者などへの補償に充てる必要性は高い。また、出版自体を制限しないのであれば加害者の表現の自由も一応守られていると言える。そうすると、立法の必要性があり、憲法上の問題もクリアすることは可能であるから、日本版「サムの息子法」の制定は支持すべきである。

太田哲郎弁護士

10数年を経過しても消えることのない遺族の悲しみ・苦痛を、まったく理解しない元少年と出版社に対して、遺族のみならず、多くの人々が、激しい憤りを感じています。被害者保護の立場にしっかり立って、遺族の感情を二度と逆なでしないような法制度を、早急に作る必要があると考えます。元少年の利益、出版社の利益を、すべて、被害者遺族への賠償にあてさせる法律が必要だと考えます。

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