総額9000億円「築地再開発」に渦巻く期待と不安 国際競争力の向上と環境への配慮の二兎を追う

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三井不動産の植田社長は「東京ドームと並ぶスポーツ・エンタメの聖地が築地にできることで、シナジーが生まれるとともに市場拡大につながる」と語る。長期事業戦略でスポーツ・エンタメを活かしたまちづくりの展開強化を掲げる同社にとって、築地の大規模スタジアムは今後の成長戦略を左右しうる一大案件ともいえる。

再開発による環境負荷の懸念

そして、今回の築地再開発で最も問われるのは、コンセプトとして掲げる「環境共生型の街」を本当に実現できるかだ。

事業計画には、オフィス棟など複数の高層ビルの建築が盛り込まれている。それにより懸念されるのが、環境への負荷だ。湾岸部での新たな高層ビルの開発は、ヒートアイランド現象を引き起こすなどの影響が懸念される。

気象庁によると、1927年から2022年、およそ100年間の東京における年平均気温は、都市化の影響の少ない都市に比べ、2倍以上の上昇率を記録した。その原因の1つが、高層ビル建設で海からの「風の道」が遮られたため、という指摘がある。

5月1日に会見した植田俊・三井不動産社長(中央)、山口寿一・読売新聞グループ本社社長(左)、山村知秀・トヨタ不動産社長(編集部撮影)

再開発の対象となる土地は、所有者である東京都から三井不動産ら事業者が70年という期限付きで借り受けるものとなっている。原則として契約満了後は更地に戻し、東京都に返還しなければならない。その際の大型施設の解体だけでも、環境負荷は相応に大きい。

5月1日の会見で植田社長は、計8回にわたり「(今回の開発では)東京都民の大切な資産を預かっている」などと強調した。その発言からは周辺住民への配慮が感じ取れたが、環境共生の実現に向けては、新しい緑地を作るといったことだけでなく、再開発による環境負荷に対する細かい目配りが求められる。

再開発事業としての収益性を担保しつつ、国際競争力の向上と環境への配慮という2つの難題を解決できるか。三井不動産ら事業者の手腕が問われそうだ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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筒井 華子 東洋経済 記者

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つつい はなこ / Hanako Tsutsui

オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設など、不動産業界を担当。福岡県北九州市出身。京都大学大学院にて、イスラーム経済を研究。共空間、環境施策、海外事業などに興味関心。趣味はサイクリングと蒸留所めぐり、相撲観戦。

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