総額9000億円「築地再開発」に渦巻く期待と不安 国際競争力の向上と環境への配慮の二兎を追う
開発の目玉となるのが、最大5万7000人を収容できる大規模マルチスタジアムだ。野球やサッカー、バスケットボールなどのスポーツ試合だけでなく、コンサートや展示会など、イベントの内容に応じて、フィールドと客席を動かすことができる。
近年、三井不動産はスポーツ・エンタメ領域での展開を強化してきている。「ららぽーと」など自社運営の商業施設でスポーツイベントなどを誘致するほか、2023年10月には日本サッカー協会とメジャーパートナーシップを締結し連携を強化。千葉県船橋市では、収容客数1万人規模の大型多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」(延べ床面積は約3.1万平方メートル、2024年4月竣工)を開発した。
スポーツの「成長産業化」を担う
2021年には約1200億円を投じて東京ドームを完全子会社化。施設の大規模リニューアルを実施するだけでなく、劇場「文の京」(東京都文京区、席数は約700席)を新たに開発するなど、投資を積極化している。
背景には、スポーツ市場の拡大が見込まれていることがある。日本政策投資銀行によれば、コロナ前の2019年における日本のスポーツ産業の市場規模は9.3兆円。スポーツ庁は経済産業省と共同で「スポーツの成長産業化」を掲げており、2025年度には市場規模15兆円への拡大を目論む。
その要となるのが、スポーツ・スタジアムの整備だ。スポーツ庁は地域活性化の起爆剤として、多機能かつ高収益なスタジアムの整備を目指す「スタジアム・アリーナ改革」を推進している。政府による後押しを受けて、不動産デベロッパーもスタジアム・アリーナの関連事業を強化してきた。
例えばNTT都市開発は、収容客数約1万人の「神戸アリーナ」(延べ床面積約3.1万平方メートル、2025年2月竣工)の開発を進めている。また日本エスコンは、北海道日本ハムファイターズの本拠地である「エスコンフィールド北海道」を核とした都市開発に参画し、分譲マンションや立体駐車場などの開発を進めている。