しかし2023年の後半以降、中国の自動車業界は利益を度外視した乱売合戦に突入。理想汽車は粗利率を維持すべきか、それとも販売量の確保を優先すべきか、難しい選択を迫られた。
同社が危機感を募らせたのは、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が中堅自動車メーカーの賽力斯集団(セレス)と共同で立ち上げた新興ブランド「問界(AITO)」の躍進だ。
問界は2023年9月、主力SUV「M7」のマイナーチェンジ・モデルを発売し、(先進運転支援システムなどの)スマート機能を強化すると同時に価格を大幅に引き下げた。これをきっかけに問界の人気に火がつき、2024年1月には月間販売台数が初めて理想汽車を追い抜いた。
BYDやテスラも値下げに参戦
理想汽車は3月1日、新型ミニバンのMEGAと主力SUV「Lシリーズ」の2024年モデルを発売したが、逆転の起爆剤にはならなかった。3月の販売台数を比較すると、問界が引き続き理想汽車を上回っている。
世界の自動車業界を見渡しても、EV事業で利益を上げているメーカーは数えるほどしかない。量産メーカーでは、中国のBYDと理想汽車のほかはアメリカのテスラくらいだ。
そんななか、BYDは2024年2月に主力車種のほとんどを値下げ。4月21日にはテスラも、中国市場で販売する全車種を一律1万4000元(約30万円)値下げした。
さらに理想汽車も追随したことで、黒字の3社がそろって価格競争に加わった格好になった。中国のEV業界の収益は今後ますます悪化し、体力が弱い下位メーカーの淘汰が進む可能性がある。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月22日
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