中国EV市場「利益なき繁忙」が止まらないジレンマ 黒字化達成の「理想汽車」もやむなく全面値下げ

✎ 1〜 ✎ 176 ✎ 177 ✎ 178 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし2023年の後半以降、中国の自動車業界は利益を度外視した乱売合戦に突入。理想汽車は粗利率を維持すべきか、それとも販売量の確保を優先すべきか、難しい選択を迫られた。

同社が危機感を募らせたのは、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が中堅自動車メーカーの賽力斯集団(セレス)と共同で立ち上げた新興ブランド「問界(AITO)」の躍進だ。

ファーウェイが自動車メーカーと共同で立ち上げた「問界」は、大幅値下げをテコにして理想汽車から市場シェアを奪った。写真は主力車種「M7」(問界のウェブサイトより)

問界は2023年9月、主力SUV「M7」のマイナーチェンジ・モデルを発売し、(先進運転支援システムなどの)スマート機能を強化すると同時に価格を大幅に引き下げた。これをきっかけに問界の人気に火がつき、2024年1月には月間販売台数が初めて理想汽車を追い抜いた。

BYDやテスラも値下げに参戦

理想汽車は3月1日、新型ミニバンのMEGAと主力SUV「Lシリーズ」の2024年モデルを発売したが、逆転の起爆剤にはならなかった。3月の販売台数を比較すると、問界が引き続き理想汽車を上回っている。

世界の自動車業界を見渡しても、EV事業で利益を上げているメーカーは数えるほどしかない。量産メーカーでは、中国のBYDと理想汽車のほかはアメリカのテスラくらいだ。

本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら

そんななか、BYDは2024年2月に主力車種のほとんどを値下げ。4月21日にはテスラも、中国市場で販売する全車種を一律1万4000元(約30万円)値下げした。

さらに理想汽車も追随したことで、黒字の3社がそろって価格競争に加わった格好になった。中国のEV業界の収益は今後ますます悪化し、体力が弱い下位メーカーの淘汰が進む可能性がある。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月22日

財新編集部

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事