エーザイ、認知症の"根治"は実現するのか 内藤晴夫CEOがこだわる「ゼロからの発明」

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内藤晴夫(ないとう はるお)●1947年生まれ。東京都出身。74年米ノースウエスタン大学経営大学院修了。75年エーザイ入社。研究開発本部長などを経て88年から社長。創業者の孫。

──ただ、Aβ仮説に基づいた米ファイザーや米イーライ・リリーの認知症薬開発は、臨床試験最終段階で不成功に終わっている。

他社のこれまでの開発では、症状が本格的に現れた後の患者で臨床試験を行っているので、あまり効果が確認できなかったのだと思う。

当社は認知症薬「アリセプト」の開発経験から、従来の臨床試験より早期段階のアルツハイマー型認知症患者でも臨床効果を確実に検出できるスコアを独自に編み出しており、それが生かせる。成功確率はかなり高いと思っている。

──次世代薬の開発のほかに、エーザイとしてどんな取り組みが必要か。

認知症には、抑うつ、徘徊、暴力的な言動といった周辺症状もある。そのマネジメントはとても大事で、症状改善薬を三つ開発中だ。

また、社会心理学的な介入が非常に重要だということもわかってきた。住み慣れたコミュニティで仲間と安心して暮らすには、介護士、薬剤師、かかりつけ医など、9種類前後の職種の人が連携して、ケアや治療をする必要がある。

そのための情報共有システムをNTTデータと開発した。品川区でのトライアルでは患者の要介護度が改善する効果が見られている。

特許切れの影響が大きく変わった

──一方、かつて3000億円以上を売り上げたアリセプトの特許切れで、足元の業績は厳しい。

特許切れの影響は10年前に比べて大きく変わった。欧米は特許切れで、あっという間に後発薬に市場が置き換わるが、国内では市場の6~7割を先発薬で守ることができた。それが、強力な後発薬の使用促進策で欧米と同じような事態が起きている。

だが、ようやく出口が見えてきた実感がある。今年度は甲状腺がん薬「レンビマ」を世界で発売する。この薬は最終段階の臨床試験で、完全治癒が4例あった。これは画期的なことで、がんを薬で治す道筋が見えてきた。ほかのがんにも適応を広げることで、大型化が期待できる。

──有力な新薬を継続して出していくために何が重要になるか。

新薬創出の可能性を上げるためには、早い段階での意思決定、サイエンティフィック・アクメン(科学的な洞察力)、得意技の三つが関係していると言われている。

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