なぜ、日本では傑出したリーダーが出にくいのか 日本社会をダメにする「二重の選抜」の非効率

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堀内:つまり、日本ではマネジメントができる人の母数を最初の段階でものすごく絞り込んでしまっているので、優れたリーダーを選抜するための母数も少なくなっているわけですね。

私が36歳でゴールドマンに入社するときの部長面接が後にパートナーになった小高功嗣さんで、彼は年齢でいうと私の2つ年上でした。最終面接ではパートナーに会っていただきますと言われてお会いしたのが、今はマネックス証券会長をされている松本大さんです。そのときに松本さんから、「堀内さんの経歴書を拝見しましたが、私、堀内さんの大学の後輩なんです」と言われてびっくりしました。恥ずかしながら、そのときは30歳でゴールドマンのパートナーになっていた松本さんを知らなかったんですね。

ゴールドマンのパートナーと言えば、日本の銀行だったら常務クラスかそれ以上ですから。30歳なんて、当時の日本の銀行だったら完全な平社員で、ひたすら現場仕事の毎日ですよ。松本さんがゴールドマンでものすごい実績を上げたのは確かなのですが、ソロモンブラザーズから転職してわずか4年足らずでマネジメントに向いているということで、一気にパートナーにまで引き上げられるというスピード感にびっくりしました。

山口:松本さんは外れ値だと思いますけれども。

堀内:たしかに松本さんは外れ値かもしれませんが、そのような人を引き上げるシステムが会社の中にあるわけです。松本さんがどんなに優秀でも、日本の銀行や証券会社では30歳で役員になることはシステム上あり得ないですから。

ビジネス社会における教養教育のあり方

少し話を変えて、ビジネス社会における教養教育について、うかがいたいと思います。山口さんには私が主催している上智大学の「知のエグゼクティブサロン」にリソースパーソンとして来ていただきましたが、私自身も日本や海外の一流大学のエグゼクティブ・マネジメント・プログラムを含めて、今までにいくつかのエグゼクティブプログラムを受講してきました。

それらのプログラムでは、著名な学者や経営者、起業家などが講師となって、「君たちは将来会社を背負って立つ人物なので、幅広い思考を身に付けてほしい」といった話がほとんどです。こうしたいわゆる「すごい人」が自分たちの成功体験や研究してきた知の体系について話をして、受講している人は「この人たち本当にすごいな、自分も頑張らないといけないな……でもやっぱり自分には無理かな」と感心して帰るのです。

私は、そのようなプログラムを「ダウンロード型のプログラム」と言っていますけれども、本当にそれでよいのかと思っています。たとえば、大谷翔平の野球の試合を見に行って、大谷がホームランを打つのを見てすごいなとは思っても、自分が大谷になれるとはとても思えないんですよね。一流オーケストラのコンサートもそうですが、本当に感動するのですが、じゃあ自分があんなふうに演奏できるかなんて考えもしない。同じように、すごい講師が出てくるエグゼクティブプログラムでは、話を聞いた瞬間はアドレナリンが大量に出て、「今日はいい話が聞けて充実した時間だった」となるのですが、その先につながらないのです。

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