なぜ、日本では傑出したリーダーが出にくいのか 日本社会をダメにする「二重の選抜」の非効率

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堀内:いろいろお話をうかがいましたが、最後に、改めて教養とは何かについて、山口さんの考えをうかがえますか。

山口:難しいですけれども、最近、私が感じていることは、教養とは「市民としての基本的な知的基盤」なのではないかと思います。私たちは憲法で基本的人権を保障され、参政権も与えられるなど、近代的な概念としての市民の権利を与えられています。

その権利の多くは生まれながらに与えられているものではありますが、民主主義社会を健全な形で維持していくために、権利を与えられている人には一定の責任が伴い、その責任をまっとうするためには、一定の知的基盤を自己で養う義務を負うものだと考えます。

民主主義の基盤が脅かされている

しかし、今、世界の至るところで、民主主義を支える知的基盤が脅かされるような出来事が起こっています。アメリカではトランプのような人が出てきて、それを熱狂的に支持する人たちがいる。社会全体には目が向かず、何よりも自分たちの利益を最優先に考える。このような市民が多数になりつつある。

政治の話だけではなくビジネスの世界も同様で、企業が誤った方向に進んでいるならば、従業員は批判し声を上げなければならないわけですが、昨今は子供でさえ仰天するような不祥事が日本でも起こっています。自動車にわざと傷つけて保険金を水増しするような不祥事は、小学生でも、幼稚園児でも「そんなことしたら、良くないよ」と言うでしょう。

行き過ぎた資本主義の弊害だという人もいますけれども、私はシステムの問題だとは思いません。資本主義をやめて社会主義に変われば良くなるのかと言えば、そんなことはないでしょう。結局、良き社会とは何か。社会にとって正しいこととは何か。こういった哲学的で根源的な問いに対する解が求められているのだと思います。そのためには、1人ひとりが知的基盤を養う必要がありますし、教養やリベラルアーツを学ぶことも必須なことだと言えるでしょう。

堀内:多くの貴重なお話をありがとうございました。

(構成・文:中島はるな)

山口 周 独立研究者・著作者・パブリックスピーカー、ライプニッツ代表

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やまぐち しゅう / Shu Yamaguchi

1970年東京都生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発などに従事。中川政七商店社外取締役。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

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堀内 勉 多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長 

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ほりうち・ つとむ / Tsutomu Horiuchi

東京大学法学部卒、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)修了。日本興業銀行(現みずほ FG)、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント代表取締役社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長等を歴任。現在、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長、上智大学知のエグゼクティブサロン・プログラムコーディネーター、一般社団法人100年企業戦略研究所所長、一般財団法人社会変革推進財団評議員、一般社団法人アジアソサエティ・ジャパンセンター理事、ボルテックス取締役会長等。著書に『読書大全』『人生を変える読書』がある。

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