「不徳の独裁型指導者」が抱く野望

「不徳の独裁型指導者」が抱く野望

塩田潮

 6月以来、実質的な政治の機能停止が2ヵ月以上もずるずると続いている。菅首相の進退問題の行方を占うと、お盆の週の週末の8月19日と通常国会会期末の31日が峠となる。

 菅首相は6月27日に公債特例法案成立などの「退陣3案件」を容認したが、岡田幹事長ら民主党執行部は「お盆までに3案件成就」という計画で退陣の花道づくりを進めてきた。19日までに成就の見通しが立ったとき、菅首相がすんなり観念すれば、進退政局は決着だが、不成就の場合や、成就が決まっても居座りを続けると、31日が山場となるだろう。

 首相が粘って70日間延長に持ち込んだという経緯があり、自ら8月末までと尻を切ったと見ることもできるが、辞めないときは内閣不信任案再提出が焦点となる。

 一事不再議(一度議決した事柄は再度審議することが否定されるとする原則)は慣行にすぎないという見解も有力。「執行部が責任を持ってやると言っているから、お盆までは様子を見守る」と言ってきた小沢元民主党代表も再提出の構えを見せ始めた。

 仮に菅首相が逃げ切りに成功し、8月末を越えて続投したとしても、衆参どちらかの総議員の4分の1以上の要求で臨時国会の召集が可能だから、臨時国会の冒頭に不信任案を提出する手がある。通常国会での再提出にしろ、臨時国会冒頭での提出にしろ、今度は可決の可能性が高い。結局、菅首相は早晩、解散か内閣総辞職かという局面に立たされる。

 菅首相は7月29日、「6月2日の党代議士会、その後の記者会見での言葉に責任を持ちたい」と語った。3案件の早期成就を、と与野党の尻を叩いているのか、それとも不成就を見越して延命や解散断行の理由付けを求めているのか。

 あるいは、この場面での一時撤退と政権再奪取というシナリオを描いて退陣を覚悟したのか。その上で、「脱原発」の推進者として生命力を維持して、退陣後に新党や新勢力の結集を図り、近い将来の返り咲きを、という野望を抱いているのかもしれない。

 野望の成否は「国民との結託」を果たせるかどうかがカギだが、騙し討ちで延命を策した「不徳の独裁型指導者」との結託には、国民の側が二の足を踏むのではないか。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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