「おじさんドラマ」すっかり定着の底知れぬ魅力 ベテラン俳優が好演、世間の"おじさん観"も変化?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「おじさんドラマ」を深夜だけにとどめておかなかったのも、テレビ東京らしい。

2014年に放送された『三匹のおっさん』。北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎が演じる幼なじみ3人が自警団を結成し、町内に起こる犯罪やトラブルを解決する。

3人が剣道など得意技を生かして大立ち回りを演じるアクション場面が見せ場。また特殊詐欺など現代人に身近な犯罪がストーリーに巧みに盛り込まれる一方、家族愛たっぷりのホームドラマでもあった。視聴率も好調で、こちらも第3シリーズまで制作された。

『孤独のグルメ』や『バイプレイヤーズ』は深夜ドラマだったが、こちらは金曜夜8時台の放送。まさにゴールデンタイム中のゴールデンタイムである。「おじさんドラマ」がメジャーになった瞬間だった。

これら一連のドラマが当たったことによって、「おじさんドラマ」は晴れてニッチなものではなくなった。『おっさんずラブ』が大ブームを巻き起こしたのは2018年のことだが、そうなる土壌はこうして少しずつ整えられていた。

スター主義からの転換、"おじさん観"の変化

ドラマづくりに関して言うと、こうした「おじさんドラマ」の台頭はスター主義から転換するひとつのきっかけになったとも言えそうだ。

ビッグスターありきのドラマづくりではなく、設定の面白さや企画のユニークさで勝負するドラマづくりを重視する流れを「おじさんドラマ」の成功は促したのではあるまいか。

またこうした「おじさんドラマ」からは、おじさんという存在に対する世間のイメージが変わってきている部分も垣間見える。

少し前までなら、おじさんはがさつで考えが古いといったような凝り固まったイメージが一般的だった。だからドラマでの扱いもそうだった。

だが最近の「おじさんドラマ」では、もっとおじさんは繊細だし、柔軟性がないわけではないものとして描かれるようになっている。野間口徹、吉田鋼太郎、阿部サダヲ、原田泰造らが演じるおじさんを見れば、それは明らかだ。

もちろん現実にはそうではないおじさんもまだまだ多いだろう。だがおじさんだって変わるべきところは変われるし、新しい価値観を認めていないわけではない。

「おじさんドラマ」に出てくるおじさんには、そんなささやかな希望が感じられる。時代も転換期にあるいま、だから「おじさんドラマ」はこれほどつくられ、支持されるのではないだろうか。

太田 省一 社会学者、文筆家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事