そんな八方ふさがりに見える状況下で、最近になって囁かれ始めたのが「レパトリ減税」の可能性である。企業や個人が海外に保有する資金を、国内に戻すことをレパトリエーションと呼ぶ。
2005年にはアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が、企業の海外利益を国内に送金する際の税率を35%から5%に引き下げる減税を1年限りで実施した「本国投資法」の事例がある。それで実際に本国送金が増えてドル高になったし、そのときの送金はかなりの部分が自己(自社)株買いに使われた。従って株価も上昇するというオマケもついた。
もし「レパトリ減税」導入でも効果は限定的
似たようなことを、2024年度の税制改正に盛り込んではどうか。差し当たって6月に取りまとめられる「骨太方針」(経済財政運営と改革の基本方針)において、「日本企業が海外で得た利益の国内還流策」が盛り込まれるかどうかが注目点となる。
日本人や日本企業が海外で得ている収益は、国際収支統計では「第1次所得収支」として計上されている。2023年(暦年ベース)で34.9兆円もあるが、その大部分は海外に蓄えられていて、円転されることが少ない。その一部だけでも日本に送金され、賃上げの原資や国内投資に充てることができれば、国内経済の浮揚につながるし、円買いが増えて結果的に円安是正も進む。一石何鳥にもなる妙手ということになる。
とはいうものの、日本では2009年度の税制改正において、「海外子会社からの配当の益金不算入制度」が実現している。すなわち外国子会社から受ける配当は、95%相当額を非課税所得とすることが認められている。これは本来、二重課税を回避するための方策であったが、ちょうどリーマンショックで企業が大打撃を受けていた時期に、この制度のお陰で国内に還流する配当金が安定的に推移したという経緯がある。
ともあれ、レパトリ減税を導入するにしても、「残り5%」の配当送金を時限立法で優遇する程度では、効果は限定的ではないか?との指摘は重く響くところである。
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