従って円安対策の王道は、海外に蓄えられた日本企業のお金を、いかに国内に還流させるかということに尽きる。企業経営の視点では、海外進出が成功して企業が儲かった時点で「合格」である。日本企業としてはそれでいい。ただし日本経済全体としては、稼いだ資金を国内に還流させて、それを消費や雇用に結びつけないと及第点はあげられない。
いちばんの課題は何かと言えば、日本企業が国内市場の可能性を信じていないことだろう。かつての日本企業は、1ドル=70円台の円高に困り果てて海外進出した。だったら今の1ドル=150円台になったら、国内回帰が進みそうなものなのだがそうなってはいない。
まずは「円安嘆き節」を封印、意識転換から始めよう
前回の記事でも触れた通り、アメリカのハイテク企業は日本への追加投資をバンバン決めている。経済安全保障や米中デカップリングだけが理由ではない。GAFAMなどにとって、デジタル黒字を稼がせてくれる日本はおいしい市場であり、データセンターやAI研究拠点の設置は前向きな投資なのである。
ところが多くの日本企業は、少子・高齢化が進む国内市場に期待が持てないでいる。「2024年問題」などの規制強化や高いエネルギー価格、果ては「すぐに辞める若手社員」まで、わが国はどんどんビジネスに不向きな国になっているのではないか。日本人自身が日本経済の未来に自信が持てないのであれば、海外に置いてあるマネーをわざわざ持ち帰ったりしないだろう。そうだとしたら、昨今の「円安嘆き節」こそが円安を招いている大きな要因ということになってしまう。
いや、いたずらに自虐的になるのはやめておこう。外国人投資家が日本株に注目し、海外IT企業の対内直接投資が増えていることを考えれば、日本経済にはまだまだチャンスがあるし、潮目も変わっているはずなのである。
まずは「円安嘆き節」を封印して、「この円安を活かして何ができるか」とポジティブな方向に意識の転換を図るところから始めるべきではないだろうか(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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