34年ぶりの円安をなんとか止める方法はないのか 「もしトラでドル安円高」では気分も晴れない

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4月16日に発表されたIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」 を見ても、アメリカ経済の成長見通しは前回1月発表分に比べて2024年は2.1%から2.7%に、2025年は1.7%から1.9%へと上方修正されている。2023年の成長実績が2.5%もあり、これだけ高金利が続いているにもかかわらず、である。ゆえにドルはほとんどの通貨に対して強含んでいる。

円安是正の希望の星は「もしトラ」くらいしかない!?

強いて円安是正のきっかけになりそうな要素を探せば、ドナルド・トランプ前大統領が「円安はケシカラン!」とご立腹であることくらいだ。4月23日にはご自身が運営するSNS「ソーシャル・トゥルース」で、ドルが34年ぶりに対円の高値をつけたことは、「アメリカの製造業にとって『大惨事』だ」と投稿している。

トランプさん、4月15日から「口止め料事件」の刑事裁判がニューヨーク地裁で始まったこともあり、かなりフラストレーションが溜まっておられる様子。真面目な話、トランプさんは元が「不動産王」であるだけに、高金利とドル高嫌いは筋金入りである。この秋の大統領選挙で勝利して、トランプ政権が復活となった場合はドル高是正が進むかもしれない。

しかるに、円安是正の希望の星が「もしトラ」くらいしかないと考えると、さすがに暗澹たる気分になってくる。4月23日には、麻生太郎自民党副総裁がトランプタワーを訪れ、トランプ氏と旧交を温めたそうだ。大いに結構なことながら、「保険は掛け捨てが望ましい」とだけ申し上げておこう。

それではこの円安、どうやったら止められるのか。いや、もちろん為替介入というオプションはある。しかるに今のようにズルズルと円売りが進む局面においては、下手な介入はかえって投機筋の参入を招き、「衆寡敵せず」となりかねない。円買い介入の原資は、1.2兆ドル規模の外貨準備に限られている。1992年のポンド安局面では、英国の当局がジョージ・ソロス率いるヘッジファンド軍団のポンド売りに敗退した故事を忘れてはなるまい。

また日米金利差が問題だからと言って、ここで日銀が金利を上げられるかといえば、それはもちろん無理筋である。そして「植田日銀」は、「サプライズ」を好んだ「黒田時代」とは正反対に、市場に対する丁寧な説明が「売り」である。3月に異次元緩和を解消したのだから、しばらくは様子を見るのが金融政策の王道というものであろう。

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