国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」
できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。
逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。
もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。
つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか。
TSMC熊本工場にはストーリーがある
——一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。
今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。
ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。
加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。
「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。
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