「金利のある世界」が到来したら起こる生活の変化 日銀正常化によって、日本はどう変わっていくのか
たとえば、バランスシートの対名目GDP比を見ると、FRBの「27%」に対して、日銀は「127%」になる。FRBは、かつてはGDP比で6%程度だったのが、リーマンショックやコロナ禍によって3割近くにまで拡大してしまった。対して、日銀もバブルが崩壊した1998年度末には15%程度だったのが、2022年度末には9倍の131%に拡大している。
要するに、桁違いにその規模が大きく、簡単に債務超過になってしまうことがわかる。植田総裁は「いずれは国債の購入を減らしていきたい」と述べているものの、その道は遠く、険しそうだ。月額6兆円の国債購入を日銀がやめてしまえば、政府はさらに金利の高い国債の発行を迫られ財政危機を引き起こす。いつまで国債を購入し続けなければならないのか、見当もつかないのだ。
ちなみに、日銀は現在時価にしてざっと「70兆円」のETF(上場型投資信託)を保有していることはよく知られているが、その含み益は「32兆円」(簿価37.2兆円)にも達する。ETFの配当は年間で「1兆円」を超えるとも言われており、子育て支援の財源に、この配当を使ってはどうかと国会で野党からも提案されている。
しかも、こうした日銀の「資産」は、安易に市場で売却するわけにはいかない。株式市場などが大混乱に陥るからだ。そもそも、歴史的に見て中央銀行は政府の経済政策に対応して、補完的な立場を維持するのが当たり前だが、アベノミクスによって「黒子」から、一躍「主役」に躍り出てしまった一面がある。植田総裁も、ゆくゆくは金融政策の黒子に撤する中央銀行に戻りたい主旨のコメントをしている。
日銀が、普通の中央銀行に戻るためには、政府が財政健全化に本気で取り組むしかないのだが、政府の2024年度の予算案によれば、国債発行総額は「181兆4956億円」(財務省)の計画となっており、新規国債発行額は「34兆9490億円」となる。
日銀の単独の力だけでは、どうにも処理できない規模の借金に膨れ上がっているわけだが、現在の岸田政権の方針は今後も「財政規律最優先」とはほど遠い、大きな政府まっしぐらに突き進んでいる状況だ。
債務超過では税金が投入されて「公正さ」の維持が困難に?
どう考えても、日銀の先行きには暗雲が垂れ込めている状況だが、内閣府の試算では、今後の長期金利の上昇は、10年後の2033年度には「3.4%」まで上昇し、政府が発行してきた国債の利払い費だけでも「22.6兆円」に達するそうだ。2023年度の利払い費が「7.6兆円」であることを考えると、10年で利息の支払いが3倍に膨れ上がることになる(日経新聞「国債利払い費10年後に3倍の見通し 金利復活、財政縛る」2024年3月20日)。
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