「金利のある世界」が到来したら起こる生活の変化 日銀正常化によって、日本はどう変わっていくのか
さらに「1.0%」の水準で3年間、利息を支払い続けると、日銀の累積損失額は自己資本(資本金1億円、法定準備金等3.5兆円、引当金勘定8.3兆円)を上回ることになり「債務超過」になると試算している(東京財団政策研究所「日本銀行はどのくらい利上げすると債務超過になるのか」、2023年10月25日より)。
日銀の保有資産の評価方法や国債の発行状況などによっても異なるが、どちらにしても0.25%とか0.6%といった極めて低い金利水準で、日銀は逆ザヤとなり、3%未満の金利水準で債務超過になってしまうということだ。
17年ぶりの円の「売り越し」拡大が意味するもの?
ドル円相場などの為替市場は、両国の金利差によって大きく左右される。金利差が拡大すれば、円は売られてドルが買われる。機関投資家などは金利の低い円で資金を調達し、円を売って金利の高い米ドルで運用してサヤをとる「キャリートレード」が活発となり、さらに円安が進む。
アメリカのインフレ懸念が消えて、利下げがいつ始まるのかは不透明だが、金利差が縮小しない限りは、円安が進行することを意味している。イランによるイスラエル直接攻撃といった地政学リスクが高まる中で、世界的なインフレ再燃の可能性はまだ沈静化しそうにない。
言い換えれば、今後も円は売られ続けることになり、日銀は金利差縮小のために、金利の引き上げを迫られることになる。日銀が金利を引き上げられるのはせいぜい0.6%程度まで。当面、日銀は円安の圧力にさらされ続けることになるわけだ。投資家もそれを見越して、円安を仕掛けてくることになる。実際に、アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドなどの投機筋による円の「売り越し」が2007年以来17年ぶりの最大規模になっているそうだ。
さらに、日銀にとって厳しいのは、日本政府の財政を支え続ける必要があることだ。植田総裁は、マイナス金利解除の記者会見でも、当面は政府が発行する日本国債を購入し続けると表明。中央銀行のバランスシート(総資産)は小さければ小さいほど健全と言われているが、国際的に見ても、日銀のバランスシートは極めて大きい。
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