崖っぷち「イカ王子」民事再生後も目指す再起 窮地が続く東北被災地の水産業を伝え続ける
「若い自分が“人寄せパンダ”になれば、宮古の水産業への注目を集められる」。
そう考えて「三陸王国 イカ王子」を名乗り、開設したばかりの自社サイトにブログの投稿を始めた。2011年夏、30歳のときだった。
折しも、実質的に経営を担ってきた叔父が病気で亡くなり、鈴木さんがその跡を継いだ。Uターンして8年目。改めて財務諸表を点検し、自社の経営体制を直視すると、経営状態は思っていた以上に厳しかった。
三陸の水産加工業は震災以前からいくつもの課題を内包していた。
水産資源の減少により原料価格は少しずつ上昇する一方で、サプライチェーンが複雑で産地に利益が残りにくく、価格決定権を持ちづらい流通構造があった。
地域の高齢化による人手不足も収益改善の足かせとなっていた。共和水産もまた例外ではなかった。
「イカ王子」で一躍脚光を浴びた
経営改善に向けて、父の代から取引のあった生協の共同購入向けのイカそうめんに特化する方針を決めた。
それまでは50gのパック入りだった商品を1食ずつのカップ入りに変更し、朝食のおかずという新たなマーケットを開拓。3億円だった売り上げを11億まで増やした。
「イカ王子」という奇抜なキャラクターによる発信の効果と「被災地を応援したい」というニーズがかみ合い、大手通販サイトと連携して開発した新商品は、サイト上位に食い込む人気となった。
流通構造の問題や人手不足といった水産業の課題に向き合う中で、市内の同業者と協業した商品開発や販路の拡大も進め、商品を携えて、台湾やニューヨークの商談会へ。
イカ王子のトレードマークの王冠をかぶりマンハッタンの試食会に立つ姿はテレビ局の密着取材を受け、報道された。無事に輸出も決まり、宮古産・海産物の販路を海外に切り拓く道を作った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら