需要が大揺れ「タイの自動車市場」に異変あり 「次の一手」として重要視するも予測困難に

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 スズキは、ジャパンモビリティショー2023でも出展したコンセプトモデル、「eWX」を公開した。

軽自動車サイズの軽ワゴンをあえてタイで公開したことに、他メーカーは興味津々だ。タイでBEV市場に参入することを想定して、実用性を重んじたBEVの現実解を提案しているように感じる。

スズキeWXは、ジャパンモビリティーショーでお披露目された軽自動車サイズのBEV(筆者撮影)
スズキeWXは、ジャパンモビリティショーでお披露目された軽自動車サイズのBEV(筆者撮影)

電動車としては、3列シートのHEVである新型「XL7ハイブリッド」を発表した。また、展示ブース内には、既存モデルのカスタマイズ車が並んだが、なかでも「ジムニー」(日本のジムニーシエラ)をベースとしたアウトドア仕様に来場者の注目が集まっていた。

日産は、タイで生産し、日本にも輸出しているシリーズハイブリッド車の「キックス」が電動車の軸足。ピックアップトラックの「ナバラ」もあるが、注目される次期ナバラに関する発表はなかった。

大きな「次の一手」となるタイ市場

このように、日系メーカー各社はBEV市場参入へのポテンシャルを対外的に示しながらも、タイBEV市場の動向を慎重に見極めようとしている。

こうした状況に対して、一部では「日系メーカーは中国市場同様に、タイでもBEVへ出遅れ」といった見方があるが、タイのBEV市場の基盤はまだ弱い。

日系メーカーが知見のあるHEVによって、タイのユーザーや販売店から「電動車に対する信頼」を得ることが先決であるだろう。日系メーカー各社の現時点での経営判断は、手堅い策であり現実解であると感じる。

ただし、2010年代からこれまで世界各地で起こったBEVシフトを振り返ってみれば、政治判断によって投資マネーが大きく動き、日系メーカーの予想に反した市場の動きを見せたケースは少ないため、タイで今後、本格的なBEVシフトが起こらないとは言い切れないだろう。

日本でも展開する中国のBEVメーカー、BYDは脅威となるかもしれない1社(筆者撮影)
日本でも展開する中国のBEVメーカー、BYDは脅威となるかもしれない1社(筆者撮影)

さらにいえば、中国BEVの車載OS(オペレーティング・システム)が社会全体のデータ基盤である都市OSと連動することになれば、タイ市場における中国BEVの存在価値が大きく変わることも考えられる。

いずれにしても、中国政府にとって、タイ自動車市場が中国国内の地産地消型ビジネスモデルからから脱皮するための輸出先として、また海外への製造・輸出拠点として重要な実験の舞台であることは間違いない。

当面の間、日系メーカーのみならず、世界の自動車産業界はタイ市場の動向から目が離せない。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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