こうしたタイ市場での中国BEVの台頭は、2023年になって一気に進んだ。三菱自のタイ法人によれば、2022年4~9月期と2023年同期を比較すると大きな市場変化が確認できるという。
2022年4~9月期の市場シェアは、ピックアップトラックが46.5%であり、乗用車ではICE(内燃機関車)が44.4%、ハイブリッド車(HEV)が7.8%、そしてBEVは1.0%だった。
それが2023年4~9月期ではピックアップトラックが33.9%と大きく落ち込み、ICEが47.4%と微増、HEVが9.3%と微増、そしてBEVが9.3%と実に9倍も伸びているのだ。
その後、2023年末の単月ではBEVは20%にまで達したが、今年に入ってから反転してシェアが落ちている。
ネガティブイメージ+与信審査の強化で
こうした直近でのBEV市場の変化について、自動車メーカーのタイ法人関係者の間では「いくつかの中国BEVブランドに対する技術やサービスへの信頼が損なわれ始めている」という共通の認識がある。
また、充電インフラの整備が行き届いていなかったり、充電器があっても故障していたりと、ユーザーがSNSでBEVに対するネガティブコメントを発信している場合もあり、そうした声も市場全体に影響を与えている可能性もあるようだ。
足元では市場の見通しがつかない状況にあるため、BEVを生産していない自動車メーカーでも販売店やユーザーとの情報交換を短期かつ定期的に行い、市場動向に関する独自の聞き取り調査を強化しているという。
一方、ピックアップトラックのシェアが落ちているのには、別の理由もある。
最近、タイではローン販売における与信審査が強化されており、ピックアップトラックの主な顧客である農家や個人事業主の収入が安定しないため、ローン審査に通る人がかなり減っているというのだ。
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