バラエティでも世界1位、どこまで攻める韓国勢 Netflix筋肉バトル「フィジカル100」の強み

✎ 1〜 ✎ 112 ✎ 113 ✎ 114 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
Netflix
男女の性差があってもハンデはなく、一対一のデスマッチが行われる(画像:Netflix)

基本的には男女の性差があってもハンデはいっさいなし。シーズン1では物議を醸した場面もありました。勝ち残りたいがために、一対一のデスマッチで明らかに体格の差がある女性をマッチョな男性が指名したからです。シーズン2でも男女横並びのルールが変わることはありませんでしたが、今度は女性が男性を指名するという見せ場が作られています。「タイマンには自信がある。私は戦いに来たのでどうせなら強い人と対戦したい」と、潔く言い放った総合格闘家の女性の挑戦は見ものです。

ドラマさながら「地下鉱山」のセット

昨年8月の撮影中、ソウル市内にあるコンベンションセンター内に組まれたセットの一部がプレス公開され、実際にその現場を見て驚いたこともありました。まずはその規模の巨大さです。シーズン1のときからセットの規模感を売りにし、シーズン2ではさらに拡大させて、サッカー場2つ分の敷地面積で撮影が行われたことがわかりました。

さらに、バラエティ番組でもドラマのセットのような作りが世界的には流行っていることを反映させてか、コンセプトも明確です。シーズン1では「古代ギリシャ」、シーズン2では「地下鉱山」をテーマにした世界観のセットを用意しています。60台のダンプカーで運搬された150メートルを超える鉱山トロッコ用鉄製レールと300トンもの砂で構築されたセットは壮観です。

「地下鉱山」をテーマにした理由について、企画したチャン・ホギプロデューサーは、「地下鉱山そのものが、人類が熾烈な競争の中に投げ込まれ、不条理と戦いながら生きていかなければならなかった時代をイメージし、番組の設定にピッタリだと思いました」と語っていました。こうした雰囲気作りによって、参加者の緊張感や高揚感といった感情を引き出す効果を狙っているのです。それは視聴者にも確実に伝わってきます。

またチャンプロデューサーがかつて特殊部隊に所属していたことが番組作りに大きく影響したようです。「陸軍に入隊して、特殊部隊にいました。そこはまさに『フィジカル100』のミニマム版のようにたくさんのクエストがあり、すべての訓練をこなさなければならない。しかも皆、強者だらけ。そんな特殊部隊から芽生えたアイデアです」。

強靭な身体を追い求める超硬派なスポーツエンターテイメントというと、日本の「SASUKE」がこのジャンルを開拓したわけですが、時代に合わせた新しい見せ方が「フィジカル100」にはあります。加えて、音楽、映画、ドラマの世界ヒットをバラエティ番組でも生かす攻めの姿勢が番組人気につながっているのかもしれません。

長谷川 朋子 コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事