入学後も続々「子どもの"隠れ"教育費」にため息 「学校指定で高額」は本当に仕方がないのか

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埼玉県の公立小・中学校で20年以上事務職員として働き、「隠れ教育費」研究室でチーフディレクターを務める栁澤靖明さんは、学校の構造的な問題点を指摘する。

「家庭にかかる費用を検討するセクションが確立されていないことが、一つの原因だと思います。そのため、制服などの指定品は家計にとって安くない出費であるにもかかわらず、そもそも『指定』であることや金額が果たして適正なのか議論されることが少ないです」

つまり、体操着でも運動靴でも一度学校の“指定品”になると、ずっとそのまま続いている、というケースが少なくない。また、ワークやドリルなどの授業内で使用される教材についても同じことがいえる場合もある。

しかし、教員らとコミュニケーションを取ることで、変化していく部分もあるという。

栁澤さんは「どんな授業をしたいのか」ということを問いかけるようにしているという。すると、代替品で対応できたり、私費負担をなくしたりできる場合があるのだという。

たとえば、従来は「きのこ栽培キット」を一人一つ購入していた授業で、牛乳パックをプランター代わりに使ったり、また、授業ではきのこの成長具合が条件によって異なることを学ぶのが目的のため、一人一つの購入をやめ、クラス単位で必要な分を購入したりなどに変更したという。

「話すと私費ではなく、公費で対応できる場合や、授業で子どもたちに学んでほしいことを別の方法で達成できる場合もあります。事務職員と教員のかかわり方を変えていけば、『隠れ教育費』問題も改善できる面があると思います」(栁澤さん)

保護者も声を上げるべき

一方で保護者の側が声を上げていくことも必要だという。

保護者などへのアンケートの実施が法制化され、学校現場でも保護者の声を反映していく姿勢ができてきた、と栁澤さんは感じている。

「お金のことも声を上げていくことが大切だと思います。『学校指定の制服だから高価でも仕方ない』『一つ一つの出費は少額だから、卒業するまでしのげばいい』と思わずに、お金に関することで疑問を感じたら、質問してみるといいと思います」

栁澤さんは「隠れ教育費」問題も、近年、その問題点が語られるようになってきたPTAのように、声を上げやすい空気が出てくると状況も変わっていくのではないか、という。

「PTAの問題も、当事者たちが声をあげることで社会問題化していったと考えています。学校は、保護者の声を重要視するので、そういった声が一つあるだけでもガラッと変わることもあります。なので、まずは保護者アンケートなどで疑問を投げかけてみてはどうでしょうか」

(AERA dot.編集部・唐澤俊介)

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