「昭和・平成に幸せだった人」が今後ラクになる発想 川勝知事辞任にも学ぶ"アップデート"はどこまで必要か

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筆者の知人の息子も不登校だったのだが、iモードがヒットした2000年頃、ケータイ向け占いサービスを始めて成功を収め、お金持ちになったという事例を目の当たりにした。

起業は過去にもあったが、現在ほど容易ではなかった。時代の急激な変化があったからこそ、キャリア選択の自由度、多様性が高まり、それが尊重されるに至っているのだ。

実際のところ、旧世代にとっても、昔よりもいまの時代のほうが生きやすさは増しているのではないだろうか。

現代も“不適切なこと”はたくさんある

筆者も含めて、旧世代の人たちは「自分たちが散々苦労してきたのに、どうして下の世代は……」という意識もあるのではないかと思う。

学生時代は、体罰や理不尽な校則、部活での過酷なしごきに耐えて、社会に出てはセクハラ、パワハラに負けず、休日出勤やサービス残業をこなしていまの地位まで来たのに、下の世代に同じ行為を行うと、「セクハラだ」「パワハラだ」と断罪されてしまう。部下は個人の権利ばかり主張して、仕事に対して責任を全うしようとしない-―。そんな嘆きがほうぼうから聞こえてくる。

しかし20年後、30年後になって、いまの若者も同様の体験、つまり自分の若いころの常識がそうではなくなる、という経験をすることになるに違いない。お互いさまのことであると思う。

「不適切にもほどがある!」の最終回の最後のシーンに、下記のようなテロップが表示される。

“この作品は不適切な台詞が多く含まれますが、時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み2024年当時の表現をあえて使用して放送しました”

現在において「正しいとされていること」でも、将来においては「不適切」と見なされる可能性があることを提起した、秀逸な終わり方であったと思う。

リアルな世界ではコンプライアンスや規制の強化によって人々の行動が制限されている一方で、ヴァーチャル空間では誹謗中傷や流言飛語が何の規制もされないままに放置されている。

個人のプライバシーが暴かれることや、偏向した報道やSNSの批判で有名人の人権を侵害することは実質的に黙認されている。

未来から見れば、現代という時代も「野蛮な時代」、「無法の時代」と映るかもしれない。

現実社会では過去にも未来にも行けない以上、価値観や行動を常に“アップデート”しながら、現代という時代と折り合いを付けて生きていくほかなく、実際そのほうが生きやすい人生にもつながっていくはずだ。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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