株価爆上げ「さくらインターネット」が描く勝ち筋 田中社長「ガバクラは"足がかり"でしかない」

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――自分を追い込むために、あえて書き込んだと。

上場してそこそこ成功するとチヤホヤされ、モチベーションが下がってくる。誰も(厳しく)言ってくれなくなり、自分で自分を追い込まないと、そこから次を乗り越えられなくなる。

さくらインターネットの田中邦裕社長
田中邦裕(たなか・くにひろ)/さくらインターネット社長兼最高経営責任者(CEO)。1978年生まれ、大阪府出身。1996年、舞鶴高専在学中に18歳でさくらインターネットを創業。社名は最初に取得したドメイン「sakura」に由来する。創業後、計約20年社長を務める。ソフトウェア協会会長など複数の業界団体の幹部も務めているほか、若手起業家やITエンジニアの育成にも取り組む。コロナ禍を機に沖縄へ移住し、現在は多拠点生活を実践している(撮影:梅谷秀司)

今、時価総額のTOP50までのリストを見てもらうと、昭和以前に設立された会社ばかりだ。厳しい中で2000億~3000億円まできたが、このまま上がらなければ、またズルズルと下がる。2兆~3兆円になって、ようやくTOP50にギリギリ入るか入らないかぐらいになる。

(ソフトバンクグループ会長兼社長の)孫さんや(楽天グループ会長兼社長の)三木谷さんがあそこまでやり切っているのはすごいけど、ほとんどの経営者はその前に脱落する。自分自身は、そのような胆力がある経営者になりたい。

ガバクラが来たときに「これだ」

――改めて、今回ガバクラに応募した狙い、いきさつを教えてください。

実は10年前から全社員向けに、「アマゾン、マイクロソフトに次ぐ、日本で最も有名で使われるクラウドになろう」というスローガンを掲げ、銀の弾丸のように一気に解決するようなものを待ち望んでいた。ガバクラが来たときに「これだ」という話になった。

もともと(現在会長を務める)業界団体のソフトウェア協会としても「クラウド化を進め、メーカー主導のSI(システム・インテグレーション)は変わるべきだ」と主張していたが、2021年にデジタル庁ができてガバクラの制度が始まった。そういう経緯で2021年にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などが選ばれたころから「やるぞ」と動き出し、その年から大幅に採用人数を積み上げた。

2023年になり、国内外関係なく、垂直統合でサービスを継続的に一体提供できる会社を望んでいたデジ庁の考えに合致した募集要件がまとまり、入札した経緯だ。

当社ではこれまでも、利益率を低下させながらも投資を続けてきた。今後も人材投資は拡大し、前期は100人、今期は200人を採る予定だ。インフラからフロントエンドの人間まで全部自社で抱える「持つ経営」は相当ハードだが、責任あるクラウド提供のためには必要だし、アメリカの企業もそうしている。

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