株価爆上げ「さくらインターネット」が描く勝ち筋 田中社長「ガバクラは"足がかり"でしかない」

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――一方で、富士通やNECのような既存の大手ベンダーなどは、積極的にガバクラの提供事業者を目指そうという意欲が薄いようにも感じます。理由をどうみていますか。

儲からないからだと思う。

すでにSIビジネスの売り上げが大きいと失うものが多いから、そこを減らすわけにいかない。国内ベンダーは、メーカーや通信キャリア系の会社が多く、短期的な収益を求める傾向が強い。どちらかというと、ニーズが多く、短期的な顧客の問題を解決して、しっかり稼げるコンサルをやったりしている。

さくらインターネットの田中邦裕社長
18歳で起業した田中社長。株主との向き合い方についても、独自の考え方を持っている(撮影:梅谷秀司)

われわれは目先では儲からないけど、10年単位の中長期で儲かるクラウドインフラの分野に着目した。どちらが正しいということではないが、うちと同じ選択をする会社は、世界中をみてもそんなに多くない。

かつての日本企業は人を抱えながら設備投資をしっかりして、利益率は低くても世界中を席巻する成長をしていたが、多くの会社は目先で利益を出し、できるだけアセットや人を抱えないことを考えるようになった。デジタルインフラの時代にそれをやる会社はGAFAMくらいで、われわれはそれを日本でやっている。

「株主資本主義」では勝てない

――市場では、PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標の改善を求める声も多いです。短期的な成果が見えづらい投資を続けるのは、大変な面もあるのでは。

「株主資本主義」は短期的には利するが、中長期では勝てない。アクティビストが世界で2番目に活躍しやすいのは日本との話もあるが、「誰がそんな日本にした」という憂いがある。

成長するセクターに大胆に投資し、一時的に利益が減っても、その後の売り上げが3倍にも5倍にもなる絵を描き、中長期で株主を利する行動を取る経営者のほうがいい。

2005年に会社が上場し、2007年に債務超過になった後の3年は自分も株主の顔色をうかがいながら経営していて、ROEやROA(総資産利益率)、PBRの改善をやっていた時期もあった。でも、「違うな」と思った。

それで2011年に、利益を大幅に減らしながらも(クラウドに最適化された日本最大級の郊外型データセンターである)石狩データセンターに投資するチャレンジをして、2014~2015年くらいから本格的に成長路線に戻そうとした。そのときにブロックチェーンに取り組んだら、急に「ブロックチェーン銘柄」になって株価が急騰したこともある。

世の中の流れの反対に向かうのは精神力も必要だ。そうした判断ができるのは、僕自身が”起業家”だからなのかもしれない。20年の長期政権で社長をやる中で、目先で少々悪くなっても、10年で大きな成長をさせればいい、という感覚がある。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞東京本社の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、ITベンダー業界を中心に取材。情報通信、メディア、都市といったテーマに関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んでいた。

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