国内金融市場の改革で注目される論点 「フィデューシャリー・デューティー」とは?

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独立性の確保に迫られる

伊藤隆敏教授が「受託者責任」という日本語を使わず、あえて「フィデューシャリー・デューティ」と言うには理由がある(撮影:梅谷秀司)

有識者会合の幹事である伊藤教授は、「東京をニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融市場に高めるためにも、あえてフィデューシャリー・デューティーという概念を和訳せずに議論した」とその狙いを説明している。

日本では、資産運用業は多くの場合、銀行や証券会社など金融機関を親会社とする系列子会社として設立されている。そうした資本関係の中で、投信などの商品ほ販売する親会社の収益追求が反映されやすい面がある。

具体的には、販売手数料が高い商品の設定・運用や、手数料積み上げのために顧客に異なる商品へと乗り換えを促すような販売も行なわれてきた経緯がある。そうした経緯の下で、欧米のような大型で長寿命の国民的な投信商品が誕生してこなかったのが、わが国の投信事情だといえる。

日本でも米国のように資産運用業に厳格なフィデューシャリー・デューティーが徹底されると、最終的には銀行、証券会社との系列関係にある資産運用会社に対して、独立性確保に向かう見直しが迫られることにもなりそうだ。有識者会合では委員の意見をにとりまとめて麻生太郎財務相に提出し、月内にも報告書を公表する見通しだ。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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