国内金融市場の改革で注目される論点 「フィデューシャリー・デューティー」とは?
財務省・金融庁は6月24日、金融・資本市場活性化の有識者会合(幹事・伊藤隆敏コロンビア大学教授)を開催した。会合では、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの制定など一連の資本市場改革が一定の成果を上げつつあることを確認し、今後の新たな改革項目で意見が交わされた。
たとえば、コーポレートガバナンスの改善について、すでに一部では、政策保有株式の保有意義が認められる場合を除いて保有しない基本方針や、企業の中長期的な価値向上の観点からの議決権行使基準を公表する企業が現れており、これが市場から高く評価されているとの意見が出た。
資産運用業に求められる認識
そして、取締役会での検証結果を反映した政策保有に関する方針を株主などに説明し、アカウンタビリティーを果たすよう真摯な対応を要請するとの立場で、委員の意見が集約された。これによって今後、企業による政策株式保有の厳格化に一段のプレッシャーがかかる可能性がある。
もう一つの注目点は、資産運用業の抜本的な強化が必要との観点から、資産運用業でフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に立脚した優れたガバナンス、報酬体系の確立が重要との認識が示されたことだ。
フィデューシャリー・デューティーは、米国の年金運用の分野などで求められてきた受託者の責任を意味し、民法で要請されている善管注意義務を超えた重たい責任概念である。したがって、有識者会合の場でこの切り口から資産運用業のあり方が論じられた意味はきわめて大きい。
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