東京都が切り捨てたカウンセラーに広がる余波 江東区はSCを「有償ボランティア」として募集
有償ボランティアとは文字通り、少額の謝礼を得て活動するボランティアのこと。本来の特性である「無償性」と矛盾するという指摘があるなかで、一般的な水準よりも安い単価で働く人のことを「有償ボランティア」と称する動きは官民問わず広がっている。「最低賃金以下で働く労働者」が安易に増えることに、個人的には強い危機感を覚える。
1校当たりの年収は3分の1に
同区のホームページをみると、たしかに有償ボランティアSCの募集要項があった。応募資格として「服務規律及び職場のルールを順守」などとあるほか、小中学校の勤務回数は年間23回程度、勤務時間は1日6時間程度、謝礼金は1時間4200円と記載されている。都と比べると年間の勤務時間は半分、1校当たりの年収は3分の1ほどになる。
指揮命令下での業務であることや、時間的、場所的な拘束度の高さをみると、民間であれば労働基準法などの保護の対象となる労働者とみなされる可能性が高いのではないか。
そうでなくともSCはときに子どもや保護者からの暴言、暴力に向き合わなければならないケースもあると聞く。こんなとき、ボランティアでも会計年度任用職員と同水準の保障はなされるのか。賃金水準や福利厚生などの低下につながる恐れはないのか。
同区教育委員会に取材をすると、おおむね次のような文書回答があった。
「学校等の実情に応じて柔軟に対応するためには、勤務時間や勤務日が設定されている会計年度任用職員では難しいため、2010年度から有償ボランティアの募集を始めた。ボランティアにすることで会計年度任用職員の時給上限を超え、専門性を加味した報酬(1時間4200円)を支払えるようになるなど、処遇の低下にはつながっていない。
学校とSCが双方のニーズを確認して柔軟に業務に従事してもらうことで、(別に)本業のある方や育児、介護中の方も力を発揮できる」
区教委の説明では、募集開始は10年以上前。正確には都の大量雇い止めの“余波”ではなく、失業したSCたちが別の仕事を探すなかで、同区の募集の実態を知り、あらためてショックを受けたということのようだった。
とはいえ、有償ボランティアという形態に対しては違和感を訴える声が多かった。
「身体に危険が及んだとき、どこが責任を取るのか」「ボランティアの立場でどこまでモチベーションや仕事の質を保てるのか」「今後、ボランティアで募集する自治体が増えないか不安」など。
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