住民による懸命の復旧努力で明かりが灯り始めた被災地、将来を見据えた住宅政策が課題に

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 津波被害で自宅を失った住民も、仮設住宅への入居でようやく落ち着いた生活を取り戻しつつある。東松島市新東名の自宅を津波で失った中田義美さん(71)および幸子さん(67)夫妻は、5月16日に同じ市内の高台にある仮設住宅に入居した。

仮設住宅は4畳半2間で、収納スペースが少ないうえ、外に物置を置くこともできない。「それでも避難所生活と比べたら、ずいぶん楽になった」と義美さんは語る。

もともとひざに持病があった義美さんだが、すし詰め状態の避難所ではひざを伸ばすことも寝返りを打つこともできなかったという。「今では毎日風呂に入ることもできるし、足を伸ばして眠ることができる。幸い、仮設住宅の近隣は同じ地区に住んでいた人たちで、顔なじみも多い」(義美さん)。

被災した住民が元どおりの生活に戻るのは容易ではない。前出の佐藤さんの場合、復旧にかかる工事費用の大きさが頭痛の種だ。多賀城市が交付した罹災証明書では「大規模半壊」の扱いで、住宅の応急修理制度および被災者生活再建支援制度に基づき、最大で252万円が多賀城市から支給される見通しだ。だが、復旧に必要な費用は800万円に上る見込みで、年金生活の佐藤さんにとっては大きな負担になる。中田さん夫妻も、仮設住宅を出た後の生活については、見通しは立っていない。

それでも、被災住民の生活が落ち着きを取り戻しつつあるのは、住居の安定によるところが大きい。将来を見据えた住宅政策をどう構築するかが、震災復興のうえでの最大の課題になる。


■仮設住宅に入居した中田さん夫妻

(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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