日本茶輸出「倍増計画」、カギは中国だった 緑茶を飲む習慣のある国で喰い込めるか

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政府も日本茶を重点品目に加えており、2005年には21.1億円だった輸出額は2014年にはその3倍以上の78億円を達成。2020年には150億円を見込んでいる。6年でおよそ倍増をめざすわけだ。

とりわけ市場として有望視されているのは、アメリカ、シンガポール、そして台湾と香港だ。健康志向の強いアメリカでは、高品質の日本茶が健康食品としてのイメージと地位を確立しており、高級品は贈答品として用いられている。さらに古くはカリフォルニアなどに多数の日本人が移民し、日本茶を持ちこんだ経緯もある。戦前には年間7000トンも輸入されていた。

その一方では日本茶の高い品質は認識されつつも、価格の高さなどのハードルもある。また輸出国の中には極めて低い残留基準が設定されていることがある。

EUへの輸出には高いハードル

たとえばEUの場合、要求される作物残留試験数は8例で、農薬メーカーが農薬の種類によってインポートトレランス(輸入食品の残留農薬基準)を担当するラポーター国に申請し、その審査した上で欧州食品安全機関に持ち込まれ、欧州委員会で許可されなければならない。手続きが非常に煩雑になっている。また承認にかかる期間は6年から7年、費用については1億5000万円から1億8000万円と、メーカーの負担は非常に大きい。

これについて農水省は、農薬使用を逓減する新たな防除対策を確立するために2015年度予算で8600万円を計上。害虫の天敵の使用など代替技術の導入などに務めるつもりだ。

農薬以上に困難なのは、2011年3月の福島原発事故による風評被害だ。とりわけ隣国である中国と韓国は、日本から輸入するすべての食品等について、日本の政府機関が発行する証明書を求めている。これらは非常に厳しく、日本政府は今年5月に韓国政府の水産物輸入禁止措置は不倒な輸入規制に当たるとして、WTOに提訴したほどだ。

しかし、中韓2カ国は日本から茶葉をほとんど輸入していないこともあり、日本政府は積極的に動いている様子がない。背景には、輸入規制の主たる原因は原発ではないと考えられていることもある。中国との間には尖閣問題、韓国との間には竹島問題を抱えており、被災地から遠い静岡や鹿児島が主たる産地の茶葉を輸入規制することは「政治問題」ととらえられている。

一方で、こうした輸入規制を「逆手」にとった利権問題も発生した。民主党政権末期の2012年に起こった一般社団法人中国農産物等輸出促進協議会事件である。

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