【産業天気図・鉄道/バス】2005年度予想を増額、06年度も実質堅調
私鉄業界の2006年度は、景気の拡大、雇用情勢の好転、個人消費の拡大を背景に05年度と同様に順調な業績が見込めそうだ。
まず、足元の05年度第3四半期までを見ると、私鉄大手14社(非上場の西武鉄道を除く)のうち、前年同期比較ができない近畿日本鉄道<9041.東証>(前年同期は売上高以外非公表)を除く13社の売上高は前年同期比9.9%増、営業利益は同12.3%増、経常利益は同18.2%増、第3四半期純益は同48.3%増だった。04年度の第3四半期が減収10社だったのに対し、今期は増収が9社であり、この間の景気好転ぶりがうかがえる。基調として輸送人員の増加があり、それに沿線などでの不動産販売の好調や、寒さによる冬物商戦の好調から百貨店など流通の好転も加わった。今第3四半期での減益会社は、前期に減損対応で不動産販売を膨らませていた小田急電鉄<9007.東証>1社だった。
こうした第3四半期までの好調を受け、通期予想も売上高で増額2社、減額2社、営業利益では増額10社に対し減額はゼロだった。私鉄の特性として鉄道、流通の修繕費、除却損が第4四半期に集中する傾向はあるが、今期はここまでの利益の積み上がりが大きく、それが通期利益予想の増額につながった。通期増額幅が大きいのは東武鉄道<9001.東証>、東京急行電鉄<9005.東証>、通期減益ながら小田急、京王電鉄<9008.東証>、阪急ホールディングス<9042.東証>、阪神電気鉄道<9043.東証>などである。『会社四季報』の14社合計の通期売上高は7兆1927億円(前期比2.3%増)、営業利益5253億円(同1.6%増)、経常利益4062億円(同4.7%増)、純益1826.5億円(同12.0%増)となった。3カ月前の本欄では、営業利益を「1.2%減」と予想しつつ、「プラス着地の公算」としていたが、やはり営業利益予想は14社合計で145億円増額され、増益予想に転換した。
◆06年度は見掛け減益予想だが…
続く06年度の14社合計予想を『会社四季報』は、売上高7兆1920億円(05年度予想比0.0%減)、営業利益5168億円(同1.6%減)、経常利益3989億円(同1.8%減)、純益2034億円(同11.4%増)と見ている。見掛けは減益予想だが、前期には一部の社が減損対応で不動産販売利益などを膨らませるという攪乱要因が含まれており、業績の基調としては堅調な推移が見込まれる。景気拡大、雇用情勢の好転(→正社員の増加→鉄道・定期の人員増)、個人消費の拡大(→流通・ホテル・レジャー部門等の好転)などから、鉄道輸送人員、不動産、流通等の各部門で特段の悪化要因は現状、予想されない。
05年度は東武、京浜急行電鉄<9006.東証>、京成電鉄<9009.東証>、近鉄、阪急、南海電気鉄道<9044.東証>(当期赤字)の各社が減損処理で大きな特損を計上している。これに対応して不動産販売利益を膨らませた東武、京急は06年度で大きな営業減益が予想されている。また東急、京王は鉄道投資や再開発などに伴う修繕費や除却損の拡大という、積極投資に伴う費用増などで減益を見込む。これらの要因が足を引いて、14社合計では営業減益が予想されているが、純益ベースでは2ケタ増益が続く見込みで、実態としては純益ベースでとらえるのが適切だろう。
【中川和彦記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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