週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ

8分で読める
  • 田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家
2/4 PAGES
3/4 PAGES

これでは、賃金も2倍、物価も2倍になっているから、実質賃金は上がっていない(おにぎりは美味しくなっている)。実質賃金を上げるには別の研究開発をする必要があったのだ。

雇用を減らして雇用を生み出す

それは、品質ではなく、生産効率を高める研究開発である。少ない人数で米を栽培し、おにぎりを作る。5人で30個のおにぎりを作ることができたら、1日3000円の売り上げを5人で分けることになるから、賃金は300円から600円に上がる

クビになった5人は、このままだとまずいと思い、新たな事業を始める。たとえば、ビール会社だ。

麦を栽培して、ビールを作る。1本300円。10人の村人が毎日1本ずつ買えば、売り上げはこちらも3000円で、1人あたりの賃金は600円になる。

つまり、この村の住民は600円の給料で、おにぎり3個(1個100円)とビール1本(300円)を買えるようになった

こうして、既存の産業の雇用を減らして、新しい産業の雇用を増やすことで、経済は進歩してきた。その結果、現代では、米やビールだけでなく、衣服、電化製品、教育など、さまざまな製品やサービスを手にすることができている。

実際に、100年前にくらべると賃金に対して支払う食費の割合は3分の1になっている。もしも雇用を減らす努力をしなければ、実質賃金は上がらず、新しい製品やサービスを手にすることはできなかった

もちろん、雇用を減らすだけ減らしても失業者が増えるだけでは意味がない。雇用を生み出すという意味でも、ビール会社の例のようなイノベーションが必要になる。

しかし、近年の日本では真逆の努力がなされていた。「日本経済は成熟しているから新しい需要を生み出すことが難しい」と考えて、高機能高付加価値のものを作る努力をする企業が多かった。これは高級おにぎりを作る村と同じで、実質賃金は上がらない。

次ページが続きます:
【少子化にどう対応するか】

4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象