日本人の「賃金上昇に限界」がある超基本的な理由 日本全体で考えると「やるべきこと」はただ1つ

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企業の労働生産性を上げるもう1つの方法は、投入する労働を減らすことだ。要は働く人をクビにする

「クビになんかできない。高い商品を作る努力をすべきだ」

終身雇用を是としている日本では当然の選択に思われるが、実はここに大きな落とし穴がある。日本全体で高い商品を作る努力をしても実質賃金は上がらないのだ。

ポイントは、「全体」というところにある。みんなが高い商品を作れば、みんなが高い商品を買わされることになるからだ。

高い商品を作るか、クビにするか、どちらがいいのか。架空の村を作って思考実験をしてみると、答えは明白になる。

高級おにぎりを作る村

ここに10人で暮らしている村があるとする。シンプルに考えるために、住民はおにぎりだけ食べて暮らしているとする。この10人はおにぎり会社で働いている。自分たちで育てたお米を炊き上げておにぎりを作る。

1つ100円のおにぎりが毎日コンスタントに30個ずつ売れる。当然である。朝昼晩と10人が1つずつ買っているからだ。

1日の売り上げは3000円。働く10人でこれを分けると、1人当たりの賃金は300円。それぞれの村人は賃金として受け取った300円を支払うことで、毎日3個ずつのおにぎりを買って暮らしている。

おそらく江戸時代はこれに近い暮らしだっただろう。村の中でおにぎりが売られていたわけではないが、多くの人がお米を作るために働いているという点ではかなり近いはずだ。

さて、このおにぎり会社は客単価を上げて売り上げを増やそうと考え、高級おにぎりの研究開発に乗り出した。そして、米の栽培方法、米の炊き方、おにぎりの握り方にこだわって、1個200円の高級おにぎりの開発に成功する。

結果、1日の売り上げは3000円から6000円に倍増。給料も300円から600円に増える

ところが、である。村人たちは生産者でもあり、消費者でもあるのだ。結果、おにぎり1個を買うのに200円支払う必要が出てくる。手に入れた600円の給料で200円のおにぎりを毎日3個食べる生活に変わるのだ。

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