2024年ベスト経済書、2位と3位はこの書籍だ! 賃金と日本経済に関する書籍がランクイン

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『賃金とは何か』書影
『賃金とは何か 職務給の蹉跌と所属給の呪縛』(朝日新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
濱口桂一郎(はまぐち・けいいちろう)/1958年生まれ。労働政策研究・研修機構労働政策研究所長。著書に『ジョブ型雇用社会とは何か』など

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経済の専門家が選んだ、2024年のベスト経済書・経営書は何か。本特集では、経済学者やエコノミストなど33人のアンケートを基にランキングを作成。年始にこそ読んでいただきたい書籍を紹介する。

「定期昇給は」うまい仕組み

多くの国で賃金が上がる中、なぜ日本の賃金は停滞し続けたのか。カギは「定期昇給」のシステムにあると著者は指摘する。

▼著者に聞く 

歴史を見ていくと、日本の賃金が上がらなかった理由は明らかだ。メンバーシップ制の中で、「定期昇給」の仕組みが非常にうまく運用されていたのである。会社員個人は何もしなくても毎年給料が上がる。しかしそれを全部足し上げると、企業が支払う給料の総額は大きく変動しない。企業にとって使い勝手がよく、労働者個人もそれなりに満足できる仕組みだったから、本当の意味での賃上げ、「ベースアップ」なしでもやってくることができた。

昨今、マスメディアで繰り広げられる賃金に関する議論は表層的で、最近のことしか見えていない印象があった。例えば職務給にしても、60年ほど前、池田勇人政権時代に同様の議論が行われており、日本の賃金を考えるなら当時の話は不可欠だ。しかし、それを語る人はいない。まだ「歴史」になってはいないけれども今はもう顧みられない「昔話」を、一度まとめておこうとこの本を書いた。

時に誤解されるのだが、私には「世の中を変える提言をしたい」などというたいそうな発想はない。歴史書として楽しんでほしい。

▼推薦コメント

「ジョブ型雇用」というフレーズが楽観的思考と共に乱用される昨今だが、本書は日本の雇用・賃金情勢について、現状と展望を的確に示す。明治以降の歴史を踏まえつつ日本の賃金制度の現在地を説いており、歴史的、国際的な視点からの学びが多い。(唐鎌大輔)

2024年の春闘で大幅賃上げが実現し、今後もベースアップが期待されている。だが、「それだけで万々歳というわけにはいかない」とする著者の主張は、春闘前の今、傾聴に値する。(宮嶋貴之)

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