Vチューバー事務所、大盛況「フェス」で意外な明暗 収入増が続く一方、ANYCOLORはマイナス影響も
外国人の多さに加えて、衝撃的だったのはグッズ販売の盛り上がりだ。
会場内にはグッズ販売専用の巨大エリアが設けられ、グッズを買い求めるファンが長蛇の列を作っていた。応援するVチューバーのぬいぐるみを買いそろえたり、大量の缶バッジでリュックを装飾したりする「推し活」が、こうした購買力を強力に下支えしている。
異様な盛り上がりを見せるVチューバー業界。しかし、ここに来て不安材料も見え始めている。
カバーの競合で、Vチューバー事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORは3月14日、2024年4月期の第3四半期決算を発表した。グッズ販売の拡大を軸に、売上高・営業利益ともに前年同期比で約20%の成長となった。
ところが発表翌日、同社の株価はストップ安水準にまで急落した。第3四半期の累計決算は増収増益だった一方、直近四半期(2023年11月~2024年1月)だけでみると、売上高は前年同期比4.7%増、営業利益は同20.1%減に落ち込んでいた。これまで急速に成長してきただけに、市場の高い期待を下回ったとみられる。
昨年末のフェスでは赤字が拡大
直近の業績が伸び悩んだ要因の1つとなったのが、昨年12月に2日間開催された「にじさんじフェス」だ。会社の説明によれば、フェスによる収入自体は前年と比べ5割近く増加したものの、「関連費用の想定以上の上振れ」によって赤字が拡大し、全社の営業利益率の低下を招いたようだ。
もともとANYCOLORは、利益率の高いグッズ販売やプロモーションで先行してきた。前期実績では売上高に占めるグッズ販売とプロモーションの割合は、カバーが52.2%であるのに対し、ANYCOLORは72%だった。結果的に営業利益率でも、カバーが16.7%、ANYCOLORが37.1%と、倍以上も差が開いている。
ある業界関係者は「通常の営業利益率が40%近い水準にまで上がっているANYCOLORにとっては、コストがかかるフェスの規模が大きくなるほど、利益率が下がってしまうのだろう」と指摘する。その点、カバーはフェスの開催が収益性にマイナス影響を与える可能性は相対的に低いといえる。
フェスの採算悪化以上に、今回の決算で不安視されたのが、英語圏向けのVチューバーグループ「NIJISANJI EN」の苦戦だ。前期のNIJISANJI ENの全社売上高に占める割合は25%に達し、この先会社の成長を牽引すると期待されていた。しかし、直近の売上高は前年同期比で24.6%の減収となっており、収益柱であるグッズ販売が落ち込んでいる。
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